医者がすすめる専門医

ドクターズEye 医者がすすめる専門医：日本の医療現場を映し出したドキュメンタリー

『ドクターズEye 医者がすすめる専門医』は、BS-i（現BS-TBS）で2004年10月から2006年9月まで放送された医療番組です。毎週月曜日の夜に放送され、再放送も複数回行われました。番組は、山本文郎氏と長岡杏子氏（当時TBSアナウンサー）の進行、医学ジャーナリストの松井宏夫氏の解説、関口伸氏と鈴木まどか氏によるナレーションで構成されていました。

プログラムの内容：手術の様子から医師の思いまで

この番組の最大の特徴は、各分野の専門医による実際の医療現場を克明に紹介していた点にあります。手術中の様子は、性器以外の部位については、一切ぼかし加工をせず、詳細な映像でリアルに放送されました。これは、当時の医療番組としては非常に珍しい試みでした。

番組は、前半では病気の特徴や自己診断チェック、専門医の紹介を行い、後半では専門医と患者の交流や、高度な技術を駆使した手術の様子を詳細に追いかけました。手術中にはCG画像を用いて、進行状況を分かりやすく解説。番組の最後には、松井宏夫氏による解説と、専門医の医療への思いや信条が語られました。全体を通して、ナレーションは軽快なトーンを保ちつつ、手術の生々しさと対比することで、視聴者に深刻なテーマを伝えつつ、ショックを和らげる効果を生み出していました。

番組で取り上げられた病気は、主に外科手術を必要とするものが多く、範囲も多岐に渡っていました。紹介される専門医は、大学病院の教授や院長クラスが多く、手術は原則として紹介された専門医本人が執刀。例外的に、助手や同僚が補助的に手術に参加することもありました。

専門医の選定基準と番組の価値

番組で紹介された医師の多くは、書籍『医者がすすめる専門病院』を参考に選定されましたが、具体的な基準は公開されていません。推測として、手術成績、病院内での地位、豊富な執刀経験、熟練の技量、新たな手術法や器具の開発・実践などが考慮されたと考えられます。しかし、最も重視されたのは医師の人柄・人格であり、番組を制作する上で綿密な調査が行われていたことは間違いないでしょう。番組の最後を飾る専門医の言葉からは、患者や医療への真摯な姿勢が伝わってきました。

番組では、患者本人の顔を隠さないことが一般的でした。そのため、医師と患者の関係性を深く掘り下げたドキュメンタリー的な要素も強く、同じ病気に苦しむ視聴者への共感と理解を促す効果がありました。手術の様子や患者への対応を通して、病院や地域医療、ひいては日本の医療レベルを推察できる点も、番組の価値を高めていたと言えるでしょう。

健康医療番組としての意義

当時の健康・医療番組は、視聴者の健康意識向上を目的とした啓発番組が中心でした。医師の視点から医療現場を紹介する番組は少なく、手術の様子を詳細に描写する番組はほとんどありませんでした。民放では、視聴率を優先して、センセーショナルな演出や、医師のネガティブな側面を強調する傾向がありました。

『ドクターズEye』は、衛星放送という枠組みの中で、よりリアルな医療現場の描写を可能にしました。無駄な演出を排し、医師の冷静な対応、手術の日常性を淡々と伝えることで、視聴者に医療現場の現実をありのままに伝えました。特に、医療ミス問題への関心の高まりの中で、表面的な報道が多い中、医療現場の真実を伝え、医師の責任、患者の苦悩、医療への期待といった複雑な要素を提示したことは、大きな意義がありました。

スタッフとその他の情報

番組制作には、多くのスタッフが関わっていました。構成は高橋秀樹氏、協力には「セカンドオピニオンを推進させる会」や中村康生氏（『医者がすすめる専門病院』編者）などが名を連ねています。番組で紹介された手術は、放送時期と近い時期に行われたものが多く、最新の医療技術を見ることができました。また、番組では、手術で使われた器具や人工臓器をスタジオで紹介する回もありました。過去に専門医として出演した医師が、推薦医として再び出演することもありました。

番組はDVD版（全97巻）も発売され、医学教育の分野でも活用されました。番組で紹介された多くの医師は、その後も第一線で活躍し続けました。しかし、番組中に紹介された専門医の中には、既に亡くなられた方もいらっしゃいます。番組は、日本の医療現場の輝かしい一面と、その影の部分も映し出した貴重な記録と言えるでしょう。番組で紹介された医師や患者の皆さん、そして制作に関わった全てのスタッフに敬意を表します。

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