十全なす

十全なす（じゅうぜんなす）

概要

十全なすは、新潟県で特に栽培されるナスの一種で、そのユニークな形状から、料理の用途が広がります。一般的に巾着型の形をしており、特に浅漬けに利用されることが多いのが特徴です。出荷時期は毎年6月中旬から9月下旬までの限定で、この季節に新鮮な状態で市場に出回ります。

歴史

この品種の歴史をさかのぼると、昭和初期に新潟県中蒲原郡十全村（現・五泉市の一部）で、泉州水なすと在来種を交配して開発されたことに始まります。十全なすはその後、新潟市や長岡市にも広まり、特に1940年頃には長岡で梨なすとも呼ばれるようになりました。この名称が示すように、十全なすの一部は地域に根ざした特徴を持っていたのです。

長岡ではこのナスの改良が進められ、黒十全と呼ばれる品種が誕生しました。これはその後、三条市などにも広がり、地域に応じて八石なすや巻機なすといった別称で商品化されました。そのため、十全なす全般が様々な名前で呼ばれ、地域ごとの特性が反映されました。

品種の変遷

黒十全が広まるにつれて、本来の十全なすは白十全や本十全と呼ばれるようになったものの、生産地は徐々に限られるようになりました。現在では、新潟市南区の白根地区を中心に生産されており、高級食材として料亭や高級料理店で利用されることが多いですが、一般的にはなかなか手に入ることが少ない状況です。

その後、黒十全から派生したF1品種として新潟十全なすが開発され、現在の生産量の約90%を占めるようになりました。この動きは、地域の農業形態にも大きな影響を与えています。特に、1990年代に入ってからは新潟市江南区曽野木地域で、水田転作の一環として、十全なすの栽培が進みました。1989年頃からは、その栽培が普及し始め、1991年からは浅漬けとしての加工販売も行われるようになりました。

まとめ

十全なすはその独自の形状と風味から、高い評価を受けているナスの品種です。日本の食文化の一端を担うこの作物は、生産地によって異なる味わいや使用法があり、特に新潟県では地域に根付いた大切な農産物となっています。今後もその存在価値は高まることでしょう。

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