十文字こと

十文字こと - 教育者としての足跡

十文字こと（じゅうもんじ こと、1870年12月31日 - 1955年5月17日）は、日本の教育界において重要な役割を果たした教育者であり、十文字学園の設立者として知られています。彼女の旧姓は高畑であり、京都府にて生まれ育ちました。幼少期は健康面で困難を抱え、小学校に入学するのも8歳の時でした。この時期の彼女は、目の不自由な母に代わって家事や農作業に従事しながら勉学に励み、学びの楽しさを実感しました。

このような経験が、教育の重要性に対する強い思いを育て、「自らの近所に小学校を設立したい」「自分が先生になって教えたい」といった夢を抱くきっかけとなりました。

東京に移ると、ことは1893年に女子高等師範学校（現在のお茶の水女子大学）を卒業しました。その後すぐに教職の道に進み、1894年には鹿児島県の尋常師範学校で助教諭を務めることになります。1897年から1899年には京都府尋常師範学校女子部で助教諭や舎監として教鞭を執りました。彼女はこの期間に、当時の教育現場での貴重な経験を積みながら、教育者としての基盤を築いていきました。

その後、彼女は十文字大元という商会を営む男性と結婚し、1902年から1906年には東京の私立日本女学校（今の相模女子大学）で教員として活躍しました。夫が設立した金門商会は、国産初のガスメーター製造販売に成功し、経済的にも安定しました。

1922年には、仲間とともに文華高等女学校を創立しました。当校では、夫が推進していた「自彊術」に基づく体操を日課として導入し、多くの生徒に新しい学びの場を提供しました。1924年には夫の死去に伴い、経営の舵取りを一人で担うことになりますが、その後も学校は成長を続けました。

1935年、文華高等女学校の校長に就任し、1937年に学校名を十文字高等女学校へ改称。教育者としての身をもって生徒たちにも「仕事をすること」や「自分を高めること」の大切さを説きました。彼女は、生徒たちが放課後に金門商会の工場で働く姿を報じられた際、「仕事をするということは自分をつくり上げることだ」と答えています。教育を通じて生徒たちに自立する力を育てたいと願い、努力を続けました。

戦後、彼女は1951年に学校法人十文字学園の創設に尽力し、同年には藍綬褒章を受章。この年、理事長にも就任し、学校の発展に貢献しました。1955年に84歳で逝去しますが、彼女の教育に対する理念や姿勢は今もなお受け継がれています。

十文字ことは、彼女のライフスタイルが「明治に生まれながら、今の時代に通じる『超現代女性』」と表現されたように、当時の社会において新たな道を切り開いた先駆者でした。彼女の教育に対する情熱や努力は、後世にわたって大きな影響を与え続けています。

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