十輪寺 (高砂市)

十輪寺（じゅうりんじ）

兵庫県高砂市の高砂町横町に位置する十輪寺は、浄土宗西山禅林寺派の寺院です。山号を宝瓶山と称し、本尊として阿弥陀如来を祀っています。特に、浄土宗の開祖である法然上人ゆかりの地として知られ、法然上人二十五霊跡の第三番に数えられています。この寺院には、「生れてはまづ思い出ん故郷に ちぎりし友の深きまことを」という御詠歌が伝わっています。

歴史

寺院の起源に関する伝承によれば、弘仁6年（815年）に空海（弘法大師）が唐から帰国した後、『地蔵十輪経』に基づき、国家鎮護の祈願寺として創建された真言宗の寺院であったとされます。当時は地蔵山十輪寺と号していました。しかし、建永2年（1207年）に法然上人が当地で民衆に教えを広めたことを契機に、法然の直弟子である信寂房によって、法然上人を再興の祖として浄土宗の寺院へと改められました。その後、法然上人が自ら描いたとされる掛け軸「宝瓶の御影」が寺院に寄贈されたことから、山号が宝瓶山と改称されたと伝えられていますが、正確な時期については諸説が存在します。

応仁の乱から戦国時代にかけての混乱期には、他の多くの寺院と同様に十輪寺も戦禍によって大きな被害を受けたと考えられています。江戸時代に入ると、初期には京都所司代を務めた板倉勝重からの篤い帰依を受け、寺領の寄進を受けるなど庇護されました。しかし、17世紀後半には宗派間の対立などによって再び荒廃しましたが、その後、第24世律空悦道によって伽藍の整備が行われ、復興が図られたと伝えられています。境内の墓地には、江戸時代に活躍した漁師、八田治部太夫夫婦の墓石が今日まで残されています。

境内と伽藍

十輪寺の境内は、中心となる本堂を中心に、御影堂、大方丈、庫裏といった主要な建物で構成されています。これらの建物の多くは長い歴史を持ち、文化財に指定されています。

本堂: 兵庫県の指定文化財である本堂は、桁行24.9メートル、梁間19.2メートルという大規模な建造物で、浄土宗寺院の本堂としては典型的な形式を有しています。屋根は本瓦葺で、構造は二重棟寄棟造となっています。
御影堂: こちらには、浄土宗の開祖である法然上人の御影が祀られています。
大方丈: 桁行13.9メートル、梁間13.8メートルの規模を持ち、書院造の様式で作られています。屋根は本瓦葺で、入母屋造です。
庫裏: 桁行22.7メートル、梁間15.5メートルを有します。屋根は本瓦葺で、正面は切妻造、背面は入母屋造という特徴的な構造です。

これらの主要建造物のほかにも、境内には大玄関や小玄関、鎮守の社を納める鎮守杜鞘堂、寺院の入口となる山門と小門、水回りの施設である水屋や井戸屋形、そして鐘楼など、様々な建物が配されています。また、境内の墓地には、高砂出身で江戸時代に活躍した実業家、工楽松右衛門（くらく まつえもん）の墓があります。この墓石は、地元高砂産の竜山石を用いており、松右衛門が考案したとされる幅広の帆布を模した独特のデザインが特徴です。

文化財

十輪寺は、長い歴史の中で多くの貴重な文化財を今日に伝えています。

重要文化財（国指定）:
絹本著色五仏尊像: 朝鮮時代（16世紀）に描かれたとされる仏画です。
兵庫県指定重要文化財:
絹本著色阿弥陀四尊来迎図: 室町時代（15世紀）に制作された、阿弥陀如来が四人の脇侍を伴って来迎する様子を描いた仏画です。
本堂: 元禄10年（1697年）に建立された、寺院の中心的な建物です。
高砂市指定文化財:
絹本著色不動明王二童子像: 鎌倉時代（14世紀）に描かれたとされる不動明王と二童子の図像です。
山門: 享保15年（1730年）に建立された寺院の正門です。
庫裏: 元禄10年（1697年）前後の時期に建てられたと考えられています。
大玄関: 正徳2年（1712年）から享保4年（1719年）の間に作られました。
小玄関: 宝暦2年（1752年）から宝暦13年（1763年）の間に作られました。
法然上人像（宝瓶の御影） 附 法然上人像（宝瓶の御影）: 法然上人ゆかりの重要な像です。

行事

年間を通して、様々な仏事や行事が行われています。

2月15日: 涅槃会（ねはんえ）
3月23日: 春彼岸会（はるひがんえ）
8月15日: 盆施餓鬼会（ぼんせがきえ）
9月23日: 秋彼岸会（あきひがんえ）
* 12月31日: 除夜の鐘（じょやのかね）

これらの年中行事に加え、毎月第1土曜日には「十輪寺の集い」が開催され、地域の人々や参拝者の交流の場となっています。

交通アクセス

公共交通機関を利用する場合、山陽電鉄高砂駅からは南へ徒歩およそ6分で到着します。また、じょうとんバス13系統を利用し、「南本町」バス停で下車すると、バス停の西側すぐの場所に寺院があります。

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