千手観音

千手観音の概要

千手観音（せんじゅかんのん）、梵語である「サハスラブジャ」は、仏教の信仰対象であり、その名の通り千の手を持つ菩薩です。この菩薩は多くの異名を持ち、特に「十一面千手観音」や「千手千眼観音」として知られています。これらの名の元は、千本の手それぞれに一つの目があるとされ、それにより観音の慈悲深さと救済の力を象徴しています。

千手観音の信仰的背景

千手観音は主にインドに起源を持ち、中国や日本においても非常に大きな影響を受けました。仏教経典における千手観音の役割については、伽梵達摩による『千手千眼觀世音菩薩廣大圓滿無礙大悲心陀羅尼經』が重要な文献として挙げられます。この経典には、千手観音が如何にしてどのような衆生を救済するかが詳述されており、今日でも多くの信者によって読まれています。

千手観音の彫像とその形態

千手観音の像は、坐像や立像があり、バリエーションも豊富です。例えば、奈良市の唐招提寺の像は立像で、42本の手を持ち、その中に911本の小手があり、合計953本の手を表現しています。これに対して、葛井寺の本尊像では、大手が40本、小手が1001本で合計1041本となっており、手の表現が非常に多様です。また、千手観音は時に一面や二十七面で表現されていることもありますが、一般的には十一面の四十二臂が多く見られます。

信仰の例と千手観音の持物

千手観音信仰は日本でも古くから広がり、奈良時代からの実際の造像例が数多く残されています。代表的な像には、道成寺本尊の北向本尊像などがあり、これもまた奈良時代に遡るものです。京都市にある三十三間堂本尊は、鎌倉時代の江戸時代に製作されたもので、42本の手を持つ井原西鶴の作品として有名です。

千手観音が持つ持物は、さまざまな経典に記載されており、宝戟、化仏、宝鐸など20種以上におよびます。これらは千手観音の力を示す象徴的なアイテムで、信仰の中で重要な役割を果たしています。特に、『千手千眼陀羅尼経』には、千手観音が持つ数多くの持物について詳しく説明されており、それぞれの意味や用途も含まれています。

現代における千手観音

近年も千手観音は多くの寺院で信仰されています。例えば、清水寺や三十三間堂などは観光名所にもなり、全国から多くの参拝者が訪れます。また、九州の観音像も多く、地域に根ざした信仰のかたちが見受けられます。千手観音は、現代においても多くの人にとって心の拠り所であり続けています。国宝や重要文化財に指定されている千手観音像は、文化財としての価値も高く、日本の仏教文化を象徴する存在となっています。

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