午後8時の訪問者

『午後8時の訪問者』（原題：La Fille inconnue）

2016年にベルギーとフランスで製作されたサスペンス映画。

監督は『ロゼッタ』や『ある子供』などで知られるダルデンヌ兄弟が務め、主演をアデル・エネルが演じる。共演にはジェレミー・レニエらが名を連ねる。本作は、診療時間外に来訪したものの応対を断られた少女が後に遺体で発見された出来事を機に、自己の行動に対する責任や倫理観に苦悩する若い女性医師の姿を追う社会派作品である。

2016年5月に開催された第69回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、世界に先駆けて披露された。

あらすじ

町の小さな診療所で献身的に働く若手医師、ジェニー。ある晩、診察時間が過ぎた午後8時を回ってから鳴ったドアベルに対し、彼女は応答しないという選択をする。ところが、その呼び鈴を鳴らした身元不明のアフリカ系とみられる少女が、診療所の近辺で亡くなっているのを警察から知らされる。この事実を知ったジェニーは、自身の判断が少女の死につながったのではないかと責任を感じ、少女の身元特定と死の背景を探ることを決意する。

捜査を進める中で、ジェニーは自身の患者である少年ブリアンが、亡くなった少女について何かを知っているのではないかと察知する。彼との関わりを通じて、少女の素性に少しずつ近づいていくジェニー。しかし、少女との接点を隠したい人々からは冷淡な対応を受け、さらに、彼女の探求を止めさせようとする者からは暴力的な脅迫を受けるなど、様々な妨害に直面する。また、ブリアンの両親からは、息子に二度と近づかないよう強く言い渡される事態も発生する。

そうした逆境の中、ブリアンの父親が何らかの秘密を抱えていることに気づいたジェニーは、彼に詰め寄る。後日、診療所に現れた父親は、重い口を開き、その夜の出来事について全てを語り始める。彼は道端に立っていた少女を見つけ、性的目的で声をかけたものの、逃げられたために追いかけたこと、そしてその途中で少女が何かに躓いて川岸に転落してしまったこと、パニックに陥り、少女を置き去りにして逃走してしまったことを告白する。驚くべきことに、ブリアンはこの父親が少女に声をかけ、追いかける様子を偶然目撃していたのだ。

父親は診療所で命を絶とうとするが果たせず、ジェニーの説得によって自ら警察に通報する。事件が一段落した後、ジェニーが以前に少女の写真を見せたことのある女性が診療所を訪れる。かつては少女を知らないと答えていた彼女こそが、亡くなった少女の姉だった。彼女は妹のために奔走してくれたジェニーに深い感謝を示し、これまでの経緯を語る。姉は恋人と妹の三人で暮らしていたが、恋人が妹に売春を強制していたことを知りながら止められなかったのは、恋人の気持ちが妹に向いていることへの嫉妬心からだったと打ち明ける。

全ての真実を知ったジェニーは、姉を見送り、そして普段と変わらず、次々と訪れる患者たちの診察を続けるのだった。

主な出演者

ジェニー：アデル・エネル（診療所の若き女性医師）
ジュリアン：オリヴィエ・ボノー（ジェニーの同僚研修医）
ブリアンの父：ジェレミー・レニエ
ブリアン：ルカ・ミネラ（ジェニーの患者の少年）
ランベールの息子：オリヴィエ・グルメ（ジェニーが少女の目撃情報を尋ねた人物）
リガ医師：ファブリツィオ・ロンジョーネ

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