半数致死量

半数致死量（LD50）についての詳細

半数致死量、略してLD50とは、特定の物質が急性毒性を示す際に用いる指標であり、動物に投与した際に、その半数が死亡するために必要な用量を表します。この用量は通常、体重1キログラムあたりのミリグラム（mg/kg）で示されます。

半数致死濃度（LC50）との関係

LD50に加え、半数致死濃度（LC50）も重要な概念です。これは、動物がガスや粉塵を吸入した際に、半数が死亡するために必要な濃度を示します。LC50は通常、ppm（百万分の一）やmg/m³（立方メートルあたりのミリグラム）で示され、特に水生動物や空気中の物質の毒性評価で使われます。

経口、経皮、静脈注射などの投与経路によりLD50とLC50の値は異なり、同じ物質でも投与経路によって毒性が変化するため注意が必要です。特に吸入時の毒性では、吸入時間が明示されていない場合、毒性評価に影響を与えることが多いため、注意が必要です。例えば、10分間の吸入と4時間の吸入では、体内の毒素蓄積や解毒の速度が大きく異なるため、これに基づく評価は変わります。

動物種の違いと測定誤差

LD50とLC50の間には明確な換算式は存在しません。なぜなら、LC50は呼吸量によって大きく左右されるからです。動物の体重やその動物種にもよりますが、大型の動物は体重あたりの呼吸量が少なくなる傾向があります。また、同じ動物種であっても、安静時と興奮時では呼吸量が大きく異なるため、実験結果のばらつきが生まれやすいのです。一般的に、LD50が1mg/kgであれば、LC50は10～500mg/m³の範囲に収まることが多いとされています。

法律と基準

日本の「毒物及び劇物取締法」では、物質が毒物や劇物として指定される際にLD50が重要な基準となります。例えば、経口投与の場合、LD50が50mg/kg未満の物質は毒物、300mg/kg未満の物質は劇物に分類されています。

半数致死量の算出方法

半数致死量を求めるには、数種類の用量で動物に試験を行い、ロジスティック回帰などの統計的方法で結果を分析します。ただし、試験には多くの動物が必要となるため、近年では動物福祉の観点から半数致死量を正確に測定する方法が少なくなってきています。その代わり、特定の用量が安全かどうかを見る固定用量法が採用されることが多いです。

刑事裁判における事例

半数致死量は法律においても重要な役割を果たす場合があります。例えば、静脈に致死量以下の空気を注入した事案では、「注入された空気が致死量以下であっても、被注射者の身体やその他の条件によって死の危険が全くないわけではない」との判決が下されています。これは、物質の量と生物学的反応を評価する際の慎重さを示すものです。

このように、半数致死量は物質の毒性を理解する上で重要な指標であり、さまざまな分野での研究や法律の分野でも重視されています。

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