卒業 (テレビドラマ)

TBS系ドラマ『卒業』：青春と成長の物語

1990年1月12日から3月30日にかけて、TBS系列で放送されたテレビドラマ『卒業』。平均視聴率17.0％を記録した本作は、卒業を間近に控えた女子大生3人の、就職活動や恋愛を通しての成長と葛藤を描いた青春ドラマです。

主人公は、木下かおり、小沢紀子、寺内友子の3人の女子大生。それぞれ異なる環境と個性を持つ彼女たちは、将来への不安を抱えながらも、卒業という大きな転換期を迎えようとしています。

長野県出身のかおりは、地元への就職を両親から期待されていますが、東京での生活に未練があり、就職活動に苦戦します。得意分野がなく、年末になっても内定を得られない焦燥感と、東京への強い思いの間で揺れ動きます。

一方、成績優秀な紀子は、大手商社への内定を得ますが、一人暮らしをしていることを隠して「自宅通勤可能」と虚偽の情報を提出したことが発覚し、内定取り消しという厳しい現実を突きつけられます。東京での一人暮らしの苦労や、社会の厳しい現実を目の当たりにする彼女の葛藤が描かれます。

友子は、アナウンサーやレポーターになることを夢見ており、養成所に通うなど積極的に活動しています。地方への就職も厭わない積極的な姿勢とは裏腹に、夢の実現への道のりは険しく、葛藤を抱えながら将来への希望を繋いでいきます。

一見、異なる人生を送っている3人ですが、スキー旅行をきっかけに出会い、互いに支え合いながら卒業の日まで友情を深めていきます。就職活動を通して出会う男性たちとの恋愛模様も絡み合い、それぞれの成長と葛藤が複雑に、そしてリアルに描かれています。

本作の見どころは、就職活動という現実的なテーマを軸にしながらも、友情や恋愛、そして自己実現といった普遍的なテーマを丁寧に描き出している点です。それぞれのキャラクターの心情描写が深く、視聴者は彼女たちの苦悩や喜びを共有し、共感することができます。

主演の中山美穂と仙道敦子は、1986年の『セーラー服反逆同盟』以来の共演となり、二人の演技は、当時多くの視聴者を魅了しました。織田裕二、永瀬正敏といった、当時人気急上昇中の俳優陣も脇を固め、ドラマにさらなる魅力を与えています。

『卒業』は、単なる青春ドラマの枠を超え、社会への一歩を踏み出そうとする若者の葛藤や希望、そして友情の大切さを描いた、普遍的な魅力を持つ作品と言えます。このドラマは、当時の若者たちのリアルな姿や心の動きを反映し、多くの共感と感動を呼び起こした、名作として記憶されています。

さらに、DREAMS COME TRUEによる主題歌「笑顔の行方」も、ドラマの世界観を彩る重要な要素となっています。

プロデューサーは八木康夫氏と伊藤一尋氏、脚本は小松江里子氏、音楽は杉本竜一氏など、当時実力派のスタッフ陣が制作に携わっています。演出は近藤邦勝氏、吉田秋生氏、加藤浩丈氏らが担当しました。

このドラマは、小松江里子氏と伊藤一尋氏による1990年代のTBS系ドラマ群の1作として、その後の数々のヒット作へと繋がる重要な作品の一つとなっています。同コンビはその後も『東京エレベーターガール』『いつも心に太陽を』『セカンド・チャンス』『若葉のころ』『友達の恋人』『青の時代』『ママチャリ刑事』『To Heart〜恋して死にたい〜』など多くの話題作を生み出しています。

もう一度検索