南三陸町防災対策庁舎

南三陸町防災対策庁舎

宮城県南三陸町に位置する旧防災対策庁舎は、東日本大震災の津波によって被災した建物です。この庁舎は、震災の記憶を後世に伝えるための震災遺構として保存され、多くの人々にその悲劇を語り継いでいます。

建設と震災前の庁舎

1995年、志津川町の町役場庁舎の一部として建設されました。当時、チリ地震の浸水深を考慮して海抜1.7mの場所に建てられましたが、2005年の合併により南三陸町役場の一部となりました。本庁舎には行政第1・第2庁舎と防災対策庁舎が隣接していました。

東日本大震災による被災

2011年3月11日、東日本大震災が発生。巨大な津波が町を襲い、第1庁舎と第2庁舎は流失しました。防災対策庁舎は、その骨組みを残して破壊され、津波の恐ろしさを物語る姿となりました。この災害により、多くの職員が犠牲となり、その悲劇は全国に知られることとなりました。

防災庁舎の悲劇

地震発生当初、津波の高さは最大6mと予想されていましたが、実際には15.5mの津波が庁舎を襲いました。危機管理課の女性職員・遠藤未希さんは、最後まで防災無線で避難を呼びかけ続けましたが、その声もむなしく津波に飲み込まれました。彼女の勇気ある行動は「多くの命を救った命懸けのアナウンス」として高く評価されています。庁舎屋上に避難した職員の多くも津波に流され犠牲となりました。しかし、一部の職員は、屋上のアンテナポールや階段の手すりにしがみつき、奇跡的に生還しました。庁舎で撮影された写真データは、津波の恐ろしさを伝える貴重な記録となっています。

町長への責任追及

震災後、町長が職員を高台に避難させなかった責任を問う声も上がりました。遺族が業務上過失致死容疑で告訴状を提出しましたが、不起訴処分となりました。

保存を巡る議論

被災した庁舎は、当初は震災遺構として保存される予定でしたが、復興事業の妨げになるとして解体が決定しました。しかし、県や国が保存を支援する方針を示したこと、また、住民の保存を求める声も大きかったことから、最終的に県が管理する方針となりました。

県有化と公園化

2015年、宮城県は2031年まで庁舎を県有化し、保存することを決定。その後の2020年には、周辺地域を含む南三陸町震災復興祈念公園が全面開園しました。この公園は、震災の記憶を伝えるとともに、地域の復興を象徴する場所となっています。

町有化と恒久保存

2024年1月、南三陸町は県に町有化の意向を伝え、県もこれを受け入れました。同年3月、震災遺構として町が保存することを表明しました。旧防災対策庁舎は、同年6月末に南三陸町に返還され、7月1日より南三陸町が管理する震災遺構として恒久保存されることとなりました。

教訓を未来へ

南三陸町防災対策庁舎は、震災の悲劇を伝えるだけでなく、災害の教訓を後世に伝える重要な役割を担っています。この場所を訪れる人々は、震災の恐ろしさを改めて認識し、防災意識を高めることでしょう。

参考資料

三陸海岸
震災遺構
南三陸町震災復興祈念公園

外部リンク

防災対策庁舎の悲劇◆宮城・南三陸
東日本大震災全国消防団報告研修会報告書 －自治体防災職員活動報告－ 宮城県 南三陸町危機管理課 (PDF)
【現地調査報告書⑨――宮城県南三陸町】 (PDF) （財団法人地方自治情報センター）

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