南京!南京!

映画『南京!南京!』の概要

映画『南京!南京!』は、2009年に中国で制作された作品であり、監督は陸川（ルー・チューアン）。この映画は、日中戦争の一環として起こった南京戦と、その後に発生した南京事件に焦点を当てています。モノクロで表現された映像は、当時の悲劇的な出来事をリアルに再現し、観客に強い印象を与えることを目的としています。この作品は、日本兵の視点から南京戦を描くという独特なアプローチを取り、戦争の惨劇と人間の感情を交差させています。

制作背景

この映画の脚本は、4年以上にわたって練り上げられ、陸川監督は日本兵の日記やモノクロ写真集から多くの取材を行ったといいます。彼は、これらの史実資料を基にして映画を作成しましたが、その一方で「これは記録映画ではない」とし、感情的な側面を重視したことを強調しています。特に、映画の中には慰安婦に関するエピソードが多く含まれ、この設定もまた豊富な歴史的資料に基づいているとのことです。

映画が公開されるにあたり、中国と日本の歴史的な認識の違いから、日本での上映が困難と言われていました。とはいえ、陸川監督は日本での公開を強く望み、2009年9月にはスペインのサンセバスチャン国際映画祭での配給が決定したことが発表されました。しかしながら、楽曲の著作権問題により、日本公開は難航し、2011年には史実をテーマにした映画祭でわずか1日の上映を実現しました。この上映会は、警視庁の警備がつくなど緊迫した状況で行われました。

ストーリー概要

映画のストーリーは、南京戦を中心に繰り広げられ、多様なキャラクターが登場します。主なキャストには、陸剣雄を演じる劉燁（リウ・イエ）や、姜淑雲を演じる高圓圓（カオ・ユアンユアン）などがいます。彼らの演技を通じて、戦争の影響を受けた人々の苦悩や選択が描かれています。

受けた反響

映画は中国国内で公開されると、激しい反響を呼びました。日本兵の描写に対しては賛否がわかれ、試写会では観客からの厳しい声が飛び交った一方で、演技に対する拍手も多く起こりました。他方、評論家からは、加害者である日本兵の視点を取り入れつつ、犠牲者の立場に寄り添った表現であると評価されることが多く、戦争の悲惨さを視覚的に伝えることに成功しています。

批評と評価

映画に対する批評は多様で、観客には賛成と反対の両論が存在しています。批評家の中には、残虐なシーンを見せる一方で、戦争の狂気を描くことに成功したとする意見もあり、また、特にモノクロ映像の美しさについて言及する声もありました。日本未公開の理由として、著作権問題の他にテーマの影響も指摘され、作品の深い内容が一般公開の障害になっている可能性も考えられています。

受賞歴

『南京!南京!』は、第57回サンセバスチャン国際映画祭において、最優秀作品賞を含むいくつかの賞を受賞しています。また、金馬奨でも最優秀撮影賞を獲得するなど、国際的に評価される作品となっています。

この映画は戦争をテーマにしながらも、その中に秘められた人間の感情や歴史の教訓をしっかりと描き出している作品として、今後も広く議論され続けることでしょう。

もう一度検索