南京糖

南京糖とは

南京糖（なんきんとう）は、江戸時代に宮城県塩竈市で誕生した和菓子の一つです。実は同名で異なる二つの菓子が存在しますが、本稿では塩竈で作られる南京糖に焦点を当てます。この和菓子は主に米粉と黒砂糖を使って練り上げたもので、独特の風味と食感が特徴です。

越後屋の南京糖の起源

南京糖を初めて作ったのは、江戸時代の塩竈にあった菓子屋「越後屋」です。この店は初代の越後屋喜三郎が創業したもので、代々受け継がれた技術によって製造が続けられてきました。伝説によると、越後屋が南京の曲芸師からこの菓子の製法を教わったとも言われていますが、詳細は不明です。ただし、江戸時代にはすでに南京糖は塩竈の名物として知られており、他の名物の浅みどり昆布や唐飴と共に人気でした。

寛政4年（1792年）の地誌『奥塩地名集』によって、南京糖は「南京糖飴」としても言及されています。その際、越後屋喜三郎が伊達吉村に南京糖を献上し、逆に求肥糖の作り方を教わったといったエピソードが記録されていますが、南京糖の正確な形態については不確かな部分が多いです。

明治時代の南京糖

明治時代には、越後屋の南京糖がさらに広まることとなります。この頃、南京糖はさまざまな形状に進化しました。櫛型、輪型、撚り型の三種類があり、それぞれの形は独特の魅力を持っていました。櫛型は和三盆がかけられ、輪型は砂糖をまぶされていました。特に輪型は「輪っこ」とも呼ばれる人気の形状でした。

しかし、越後屋は大正時代の終わりに廃業し、その結果、南京糖の伝統が途絶えることになります。だからこそ、越後屋の製品は非常に貴重なものとなりました。

仙台駄菓子としての位置付け

明治時代には仙台でも輪型の南京糖が作られ、すぐに代表的な駄菓子の一つとして認知されるようになりました。これらの輪っこは、通常の製造過程で余った菓子屑を玉砂糖で固めて作られていました。1960年代に入ると、仙台の南京糖は伝統の郷土菓子としての地位を確立し、「輪南京」や「指輪」といった名称で販売され、地域に欠かせない人気商品になりました。

この南京糖は、餅米と黒砂糖を組み合わせた食材で作られ、やわらかい噛みごたえと深い味わいが楽しめます。各店によって原材料に工夫を凝らし、きな粉を加えるなどして個性を出しています。

また、櫛型の南京糖を受け継いだものとして「きなこくし南京」が石橋屋で作られていましたが、2023年には震災の影響で閉店となり、貴重な伝統の一つが失われてしまいました。

まとめ

南京糖は、塩竈の歴史と共に深い様々な物語を持つ和菓子です。越後屋から引き継がれた製法は地域文化の一部として生き続け、仙台駄菓子としても多くの人に愛されています。このような小さな和菓子には、地域の歴史や人々の思いが詰まっています。

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