南岸低気圧

南岸低気圧：日本の太平洋側を襲う冬の脅威

南岸低気圧は、日本列島の南岸を東進する低気圧です。秋から春にかけて、特に1月から4月にかけて頻繁に発生し、日本に寒気を運んでくることで知られています。日本海低気圧が暖気を運んでくるのとは対照的です。

南岸低気圧の発生と特徴

厳密には、四国沖、東海沖、あるいは東シナ海などで発生し、日本の南岸に沿って東北東へ進む低気圧を指します。一部の文献では、中国大陸南部で発生した低気圧も含める場合があります。低気圧の東側には温暖前線、西側や南側には寒冷前線が形成され、反時計回りに回転しながら移動します。

これらの低気圧は東進しながら発達し、日本列島南岸に達した頃に最盛期を迎えます。温暖前線付近では強い南風による高温と雨、低気圧周辺では強風、そして寒冷前線付近では強い北風や東風とまとまった雨が降ることが多くなります。気象予報では「南低」と略されることもあります。

南岸低気圧は暖気側では季節外れの高温や大雨、寒気側（特に低気圧の西側）では低温をもたらすという特徴があります。晩冬から初春にかけて、関東以西の太平洋側で大きな雪をもたらす典型的な低気圧であり、東日本太平洋側の降雪の多くを占めます。2月から3月上旬にかけて発生しやすく、立春以降に発生した場合は「春の大雪」と呼ばれることもあります。特に3月下旬から4月にかけて発生した場合、桜やチューリップ、菜の花などが咲いている中で雪が降るという、珍しい光景が見られることもあります。

予測困難さと災害リスク

南岸低気圧は単純に東進するだけでなく、北上したり停滞したり、あるいは急発達・急進することがあり、予報が困難なため、大きな災害につながるケースも少なくありません。ブロッキング現象も影響を及ぼします。

かつては、台湾沖で発生して日本に大きな被害をもたらす南岸低気圧を「台湾坊主」と呼んでいました。これは、天気図上で低気圧周辺の等圧線が坊主頭に似ていることに由来します。このタイプの低気圧は、時に台風並みの勢力に発達し、高波、暴風、集中豪[[雨]]などの災害をもたらすことがありました。現在では、気象庁は「台湾低気圧」や「東シナ海低気圧」という用語を用いており、「東シナ海低気圧」は東シナ海で発生した南岸低気圧を指します。

過去の事例と被害

南岸低気圧による災害の甚大さを示す代表的な事例として、1970年1月30日から2月2日にかけて発生した昭和45年1月低気圧が挙げられます。この低気圧は中部地方から北海道にかけて暴風、大雨、高波をもたらし、死者・不明者25名、住宅被害5,000棟以上、船舶被害293隻という大きな被害を出しました。中心気圧が急激に低下し、「爆弾低気圧」とも呼ばれました。また、1999年10月27日には関東付近で低気圧が急発達し、千葉県で記録的な豪雨が発生しました。

関東地方における南岸低気圧と降雪の予測

東京を含む関東地方の平野部における降雪のほとんどは、南岸低気圧に起因しますが、その予測は非常に困難です。関東地方特有の地形による「滞留寒気」や低気圧の進路のずれが、予報の誤差要因となります。週間天気予報でも「雨か雪」「雪か雨」といった曖昧な表現が使われることが多いです。

関東地方の降雪予報を左右する主な要素は以下の通りです。

南岸低気圧の進路: 低気圧の中心が陸地に近いほど雨になりやすく、遠いほど雪になりやすい傾向があります。伊豆諸島の八丈島付近が境となり、これより南を通過する場合は雪、北を通過する場合は雨の確率が高まります。
滞留寒気層: 関東平野では、山々に囲まれた地形の影響で、地表付近に数百メートルにも及ぶ冷たい空気の層（滞留寒気）が形成されることがしばしばあります。この滞留寒気は、降雪の確率を高めます。
* 気温と湿度: 各地点の気温と湿度も重要な要素です。滞留寒気による気温の急降下も影響します。

南岸低気圧による関東平野部の雪は、雪水比が0.5～1.0程度で湿った雪が多く、降雪時の気温も0～1℃程度であることが多いです。

過去の南岸低気圧による大雪の事例

（ここでは、本文中に記載されている過去の南岸低気圧による大雪の事例のリストは省略します。リストは非常に長く、の文字数制限を超えます。）

まとめ

南岸低気圧は、日本、特に太平洋側地域に大きな影響を与える気象現象です。その予測の難しさ、そして潜在的な災害リスクを理解することは、防災意識を高める上で重要です。

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