南橘村

南橘村（みなみたちばなむら）

群馬県中部、かつて勢多郡に属していた南橘村は、近代地方制度の黎明期に誕生し、その後前橋市に編入されるまで短いながらも地域独自の歴史を刻みました。現在の前橋市域の北部に位置するこの地域は、利根川をはじめとする河川や、橘山などの山々に囲まれた自然豊かな土地でした。

地理

南橘村の村域は、群馬県の中部、赤城山南麓のなだらかな扇状地上に広がっていました。村の西境を滔々と流れるのは、日本有数の大河である利根川です。また、村内には広瀬川、桃ノ木川、そして赤城白川といった中小河川が流れ、古くから農業用水として利用され、人々の暮らしを潤していました。村の東部には橘山や八幡山といった山々が控え、地域の景観に変化を与えていました。

歴史

南橘村の歴史は、明治時代の町村合併から始まります。1889年（明治22年）4月1日、町村制の施行に伴い、この地域に点在していた上小出村、下小出村、北代田村、下細井村、上細井村、龍蔵寺村、青柳村、日輪寺村、川端村、荒牧村、川原島新田村、関根村、田口村という13の村々が一つに統合され、南勢多郡南橘村が成立しました。村役場が置かれ、近代的な地方自治体としての歩みをスタートさせたのです。

その後、行政区画の再編が行われます。1896年（明治29年）4月1日には、南勢多郡が東群馬郡と統合され、新たに勢多郡が発足しました。これにより、南橘村の所属郡は南勢多郡から勢多郡へと変更されました。

南橘村の歴史の最終章は、昭和の大合併期に記されます。1954年（昭和29年）6月4日、村域の一部である大字上小出および川原の一部が、隣接する前橋市に編入されることとなりました。そして、そのわずか3ヶ月後の1954年（昭和29年）9月1日には、残っていた南橘村の全域が前橋市に編入合併され、南橘村はその自治体としての歴史に幕を下ろしました。

村内の地域

廃止される直前の南橘村は、かつて合併前の13村を起源とする以下の大字（おおあざ）によって構成されていました。

上細井
下細井
北代田
上小出
下小出
龍蔵寺
青柳
荒牧
日輪寺
川端
田口
関根
* 川原

これらの大字名は、現在も前橋市の町名としてその名残をとどめています。

教育

村内には、地域の子供たちの教育を担う学校が設置されていました。小学校としては、南橘村立細井小学校と南橘村立桃川小学校がありました。また、中学校としては南橘村立南橘中学校があり、義務教育の機会を提供していました。これらの学校は、村の廃止後、前橋市立の学校として引き継がれ、現在も地域の子どもたちの学び舎となっています。

行政

南橘村には村長が置かれ、村政が運営されていました。歴代村長が村の発展に尽力したことがうかがえます。

終わりに

約65年間の歴史の中で、南橘村は地域住民の生活を支え、社会基盤を整備してきました。近代の町村として誕生し、その役割を終えて前橋市に編入された南橘村の旧村域は、現在も前橋市の一部としてその歴史を受け継いでいます。

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