南高梅

南高梅（なんこううめ、なんこうばい）

南高梅は、和歌山県を主産地とする梅の優良品種であり、その品質の高さから「梅の王様」とも呼ばれています。ここでは、南高梅の概要、特徴、歴史、そして近年開発された後代品種について詳しく解説します。

概要

和歌山県は、国内で生産される梅の約6割を占める一大産地であり、南高梅はまさにその代表格です。大粒で種が小さく、果皮に крас味があり、果肉が柔らかいのが特徴です。主に梅干しや梅酒に加工され、その風味は多くの人々に愛されています。発祥の地は和歌山県みなべ町であり、現在も主要な産地となっています。地域団体商標「紀州みなべの南高梅」としても認定されています。

特徴

品種特性

樹は横に広がる性質を持ち、生育は旺盛です。実の付きが良い反面、開花時期によって収穫量に変動があります。自家受粉ができないため、受粉樹との混植が必要です。病害虫には弱い面もありますが、適切な管理によって品質の高い梅を収穫できます。

完熟した果実は30g前後の大きさになり、日光が当たる部分には крас味が出ることがあります。特に крас味が強いものは「紅南高梅」として珍重されます。梅干し加工の際に問題となるヤニ果の発生が少ないのも特徴です。

収穫・出荷時期

青梅（梅酒用）：5月下旬～6月下旬
完熟梅（梅干用）：6月中旬～7月上旬（梅干しにして通年出荷）

歴史

江戸時代、紀州藩の安藤直次が、やせ地での農民の苦労を軽減するため、山に自生する「藪梅」の栽培を奨励したことが始まりとされています。明治時代に入ると、コレラの流行や戦争の影響で梅干しの需要が増加し、栽培が拡大しました。

1879年頃、上南部村（現みなべ町）の内本徳松が優良系統の梅を発見し、増殖を開始。「内本梅」として知られるようになりました。その後、内中為七・源蔵親子が大規模な梅園を開墾し、「内中梅」の栽培を始めました。

1902年、高田貞楠が「内中梅」の中から特に優れた実をつける木を発見し、「高田梅」と名付けました。1950年、上南部村で優良品種統一のための選定会が開かれ、「高田梅」が最優良品種に認定。南部高校教諭の竹中勝太郎の功績から、「高田」の「高」と「南」を合わせ「南高梅」と命名されました。

南高梅は栽培しやすく品質も優れていたため、全国的に栽培が広がり、現在では国内有数の梅品種となっています。

後代品種

南高梅の欠点を克服するため、様々な後代品種が開発されています。

小粒南高:　南高梅より小ぶりで、受粉樹として利用されます。
NK14:　自家結実性があり、収量が安定しています。梅干しとしての品質も優れています。
橙高:　βカロテンを多く含み、果実が橙色になります。
星高:　黒星病に強く、減農薬栽培に適しています。
星秀:　黒星病に強く、南高梅との受粉樹としても期待されています。
熊野仁:　黒星病、かいよう病、すす斑病等に耐病性があります。
薫南高:　黒星病に耐病性があり、豊産性です。
虎子姫:　種が小さく果肉歩合が高く、加工特性に優れています。
パープル南高:　果実全体が紫色になる珍しい品種です。
ミスなでしこ:　果実全体が紫色になり、自家結実性があります。

梅干しとしての南高梅

南高梅を使用した梅干しは、最高級品として知られています。果肉が柔らかく、機械化が難しいため、手作業で丁寧に加工されます。高級志向の高まりから、贈り物としても人気があります。

価格カルテル問題

2011年、南高梅の買い付け価格を巡り、一部の加工業者が価格カルテルを結んでいた疑いがあるとして、公正取引委員会の立ち入り検査を受けました。これは、生産農家が不当に低い価格で買い叩かれるのを防ぐための措置でした。

その他の情報

南高梅は、梅干しや梅酒だけでなく、様々な加工品に利用されています。また、和歌山県には南高梅に関する資料館や梅林などがあり、観光資源としても重要な役割を果たしています。

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