印象派 (さだまさしのアルバム)

アルバム『印象派』の概要

『印象派』は、1980年10月10日にリリースされたシンガーソングライターさだまさしの5枚目のオリジナルアルバムです。このアルバムは、さだがソロとして活動を開始して以来の重要な作品であり、特に前作『夢供養』までのプロデューサー渡辺俊幸がアメリカに留学したために、新たに服部克久がプロデューサーとして迎え入れられました。これにより、さだの音楽には新たな風が吹き込みました。

ライナーノーツの工夫

当時リリースされたLPには、非常に工夫が施されたライナーノーツが存在します。各楽曲ごとに1枚のページが割り当てられ、歌詞とさだ自身の解説、さらに楽譜までが掲載されていました。また、アルバム全体を要約する解説文が3枚組みとなっていて、さだの文章や服部克久、ディレクターの川又明博、エンジニアの山下有次などが寄稿していました。しかしCDへの移行時には、ワーナーミュージック盤では歌詞のみとなり、テイチク盤も楽曲に関する解説文が収められてはいましたが、全体の解説は省略されるなどの変更がありました。

アルバムの収録曲

アルバムはアナログA面とB面に分かれており、各曲はさまざまなテーマを持っています。

A面

• - 距離（ディスタンス）

都会に住む主人公が故郷に置いてきた恋人を思い出す中で感じる郷愁を描いた曲です。さだにとって「都市と故郷」の対比は長年のテーマでもあります。

• - 検察側の証人

芥川龍之介の短編『藪の中』からインスパイアを受けた曲で、破局した二人の理由を周囲の3人がそれぞれ語る様子を描いています。3名の証言者の声質が異なるようにエフェクトをかけており、独特の表現技法が施されています。タイトルはアガサ・クリスティの作品に由来しています。

• - 聖野菜祭（セント・ヴェジタブル・デイ）

未来社会における身分の違いを超えた恋を描いたSF的要素を含む曲で、いくつかの音楽的引用が特徴的です。曲の途中で流れる臨時ニュースが、この未来社の設定をさらに引き立てています。

• - みるくは風になった

交通事故で亡くなった実在の女性への鎮魂の歌です。この曲では、さだの親しい友人であった相沢玲子さんを思い起こし、その心情を歌に重ねています。

B面

• - たずねびと

カフェでの静かな情景の中、過去の恋人を思い出しながら今の自分を探し求める気持ちが描かれています。

• - 推理小説（ミステリー）

別れを予期する男女の心理的なやり取りを小説に絡めて描いたもので、聴く者を引き込む深い内容があります。

• - 0-15（ラヴ・フィフティーン）

さだが番組のパーソナリティを演じる形式の曲で、リクエストの様子が描かれています。非常に実験的なスタイルで、ジャズの要素も取り入れられています。

• - 神話

ギターの弾き語りによるシンプルな表現で、情熱をもった作品です。

• - 博物館

記憶を博物館の展示物に例えた曲で、さだはこの曲が歌として恥ずかしく思ったと振り返っています。

総括

全ての曲がさだまさしによって作詩・作曲され、編曲は服部克久が手がけています（ただし『神話』のみは編曲者が記載されていません）。アルバム『印象派』は、さだの音楽性がさらに深まる過程で生まれた一作として、多くのファンに愛されています。

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