原爆供養塔

広島平和記念公園 原爆供養塔：無縁仏の鎮魂と平和への祈り

広島平和記念公園の一角にひっそりと佇む原爆供養塔は、1945年8月6日、広島市への原子爆弾投下によって犠牲となった、身元不明の多数の遺骨を慰霊するために建立されました。爆心地に近いこの地には、多くの犠牲者の遺体が焼かれ、その魂を弔うための最初の仮設の供養塔は、市民の寄付によって1946年に建立されました。

その後、老朽化に伴い、1955年に現在の原爆供養塔が建設されました。安土桃山時代の御陵を模した、直径16メートル、高さ3.5メートルの円形土盛りの頂点には、石造りの相輪の塔がそびえ立ち、その内部には、約7万柱もの身元不明の遺骨と、氏名判明の遺骨817柱（2010年現在）が納められています。 他にも聖観音像や、犠牲者の名前を刻んだ象牙の塔などが安置されています。

塔の正面、石囲いの手前には、犠牲者たちの名前が刻まれた碑が設置されています。これは、彼らの記憶を後世に伝えるための重要な証です。

毎年8月6日、原爆忌には、様々な宗教・宗派の合同慰霊祭が執り行われてきました。近年は、各宗派が個別に、時間をずらして慰霊祭を行うようになっていますが、平和への祈りを捧げる人々の思いは変わりません。また、毎月6日には関係者による例祭が行われ、静かに犠牲者たちが弔われています。

供養塔には、ほとんどが身元不明の遺骨が安置されていますが、中には身元が判明している遺骨もあります。広島市は、これらの遺骨の身元確認のため、納骨名簿を公開し、遺族への返還に努めています。

地元住民の方々の献身的な活動も忘れてはなりません。特に、長年、原爆供養塔の清掃を続けられている高齢の女性は、その献身的な姿勢で、多くの人々に感動を与え続けています。この地道な活動は、原爆供養塔を単なる慰霊施設ではなく、平和への願いを繋ぐ象徴的な場所として存在感を高めています。

佐伯敏子氏をはじめとする、原爆供養塔の清掃や遺族捜しといった活動に尽力された方々の存在も、この場所の歴史を語る上で欠かせません。彼らの献身的な活動は、平和への願いを未来へと繋ぐ灯火として、これからも輝き続けるでしょう。原爆供養塔は、単なる慰霊施設にとどまらず、過去を深く反省し、未来の平和を希求する広島の象徴として、世界中の人々に平和の大切さを訴えかけています。

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