原爆死没者慰霊碑

原爆死没者慰霊碑について

原爆死没者慰霊碑（原爆しぼつしゃいれいひ）は、広島県広島市に位置する広島平和記念公園内にある重要な慰霊碑です。この碑は、原爆犠牲者を慰霊し、将来に向けた平和の誓いを込めて建立されました。公式には広島平和都市記念碑と呼ばれ、その背後には深い歴史的な背景があります。

歴史の背景

慰霊碑の根底には、1949年に制定された「広島平和記念都市建設法」があります。この法は、戦後の広島を再建し、二度と同じ過ちを繰り返さないための精神を表現しています。その設計は東京大学の助教授である丹下健三によって行われました。

慰霊碑は、広島平和記念資料館と原爆ドームを結ぶ直線上に位置し、当初の屋根はコンクリートであったが、老朽化のため1985年に御影石製に改築されています。この屋根は、雨露から原爆犠牲者の霊を守るために、いわゆる「はにわの家型」という形式が採用されています。

碑文とその意義

碑文には「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから」という言葉が刻まれています。この言葉は、当時の広島大学教授であった雑賀忠義が提案し、揮毫したものです。この碑文は、原爆犠牲者に対し敬意を表し、未来へ向けた誓いを込めたものとされています。市長の浜井信三もこの文を通じて、犠牲者に謝罪し、同じ過ちを二度と繰り返さないと誓うことを強調しました。

しかし、碑文が持つ意味合いについては議論があります。「過ち」は誰が犯したのかという問題です。設立当初から、GHQによる占領や原爆を投下したアメリカに対する批判が存在しましたが、碑文は人類全体の誓いとしても受け取られています。

原爆死没者名簿

慰霊碑には、「原爆死没者名簿」が納められており、これは毎年更新されています。2020年時点での登録者数は32万4129人に達し、これらの名前は広島市によって確認された原爆の犠牲者を意味します。新たに登録される名前の数は減少しており、存命の被爆者が減り続けていることを示唆しています。

さまざまな訪問と事件

慰霊碑は、多くの著名人に訪問される場所でもあります。1971年には昭和天皇と香淳皇后が初めて参拝し、その後も多くの皇族が訪れています。特に2016年には、当時のアメリカ大統領バラク・オバマが現職の大統領として初めて訪問し、献花を捧げ、碑文の意味を再確認する重要な瞬間となりました。

しかし、慰霊碑は過去数回にわたり、破損や vandalism（破壊行為）に遭っています。2005年には右翼団体の構成員による vandalismが起き、碑文が傷つきました。この事件は、原爆という歴史に対して未だ癒えない複雑な感情があることを示しています。

碑文に対する論争

碑文に関する議論は、誰が過ちを犯したのかという点に収束します。様々な意見が出ており、碑文は特定の国家の責任を指すものではなく、あくまで人類全体への戒めとして理解されるべきとの見解が公式に採用されています。それに伴い、碑文についての解釈の違いが続いていますが、広島市の立場としては「原爆は人類全体が反省すべき過ちである」と位置付けています。

まとめ

原爆死没者慰霊碑は、単なる記念碑に留まらず、過去の悲劇を忘れないための重要な場所であり、未来への警告でもあります。犠牲者への哀悼の念を形にするとともに、二度と同じ過ちを繰り返さないという人類全体の誓いを示し続ける意味があります。

もう一度検索