厳浩

厳浩：香港ニューウェーブ映画を牽引した巨匠

厳浩（イム・ホー、Yim Ho）は、1952年生まれの香港を代表する映画監督です。1980年代初頭の香港ニューウェーブ映画運動の中心人物として知られ、その独特の映像美と繊細なストーリーテリングで、香港映画界に大きな影響を与えました。彼の作品は、郷土への愛や人間ドラマを鮮やかに描き出し、国内外で高い評価を獲得しています。

英国留学とキャリアの始まり

厳浩は、作家である厳慶澍を父に持ち、幼い頃から芸術的な環境に囲まれて育ちました。1973年、イギリスのロンドン映画学校を卒業。帰国後、香港のテレビ局、電視廣播有限公司(TVB)に入社し、脚本家、演出家としてキャリアをスタートさせます。TVB在籍中の1977年には、監督作品『国際刑警之冤獄』がニューヨーク国際テレビフェスティバルで銅賞を受賞するなど、早くから才能を発揮しました。

香港ニューウェーブの旗手

1978年、映画界に転身。処女作『茄喱啡』は、香港におけるニューウェーブ映画の第一作目として高く評価されました。その後も精力的に作品を発表し続け、1984年に制作された『ホームカミング』（原題：似水流年）は、彼の代表作として名高い作品となりました。郷愁を誘う色彩豊かな映像と、深く心に響く人間ドラマは、香港映画界に新鮮な風を吹き込み、香港電影金像奨で最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞しました。この作品によって、厳浩は香港を代表する映画監督としての地位を確立しました。

国際的な成功と多様な作品群

1990年の『レッドダスト』（原題：滾滾紅塵）は、台湾金馬奨で8部門を受賞する快挙を達成。1996年の『太陽に暴かれて』（原題：太陽有耳）は、ベルリン国際映画祭で監督賞と国際評論家賞を受賞するなど、国際的な舞台でも高い評価を得ました。さらに、『息子の告発』（原題：天国逆子）は第7回東京国際映画祭でグランプリを獲得するなど、彼の作品は世界中の映画祭で高い評価を受けました。

厳浩の作品は、香港の社会や文化、歴史を背景に、人間の感情や葛藤を丁寧に描き出していることが特徴です。彼の作品世界は多様で、郷愁を誘うものから社会問題を鋭くえぐるものまで幅広く、常に観る者に深い感動を与え続けています。

近年の活動と今後の展望

2007年には、南京大虐殺をテーマにした新作の制作準備が進められていると報道されましたが、その後は公開に至っていません。近年は、彼の監督作品は比較的少なくなっていますが、香港映画界に多大な貢献をした彼の功績は、今後も高く評価され続けるでしょう。彼の独特の感性と表現方法は、多くの後進の監督たちに影響を与え続け、香港映画史に大きな足跡を残しています。

代表作品一覧

茄喱啡 (1978年)
夜車 (1979年)
公子嬌 (1980年)
ホームカミング (原題：似水流年) (1984年)
天菩薩 (原題：天菩薩) (1986年)
レッドダスト (原題：滾滾紅塵) (1990年)
棋王 (1990年) ※ツイ・ハークと共同制作
息子の告発 (原題：天国逆子) (1994年)
太陽に暴かれて (原題：太陽有耳) (1996年)
Kitchen キッチン (原題：我愛厨房) (1997年)
楽園の女 (原題：Pavilion of Women) (2001年)
鴛鴦と蝶々 (原題：鴛鴦蝴蝶) (2005年)
* 浮城 (うきしろ) (原題：浮城 / Floating City) (2012年)

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