厳美渓

厳美渓（げんびけい）

厳美渓は岩手県一関市にある、自然の美しさと地質学的価値で知られる渓谷です。この渓谷は、磐井川の中流に位置し、1927年（昭和2年）に国の名勝及び天然記念物に指定されました。

渓谷の概要

厳美渓は、栗駒山から源を発し北上川に注ぐ磐井川沿いに広がっています。この場所は主に栗駒山から流れ出た軽石凝灰岩に特徴づけられ、侵食によって渓谷が形成されてきました。全長は約2キロメートルに及び、奇岩や怪岩が豊富にみられます。

特に、厳美渓の河床では石英安山岩質の溶結凝灰岩層に生じた方状節理のひび割れに石が侵入し、岩盤を球状に削ることによって無数の甌穴（ポットホール）が形成されています。これらの地質学的特徴は学術的にも非常に貴重な資料となっています。

この地域は古くから美しい景勝地として親しまれており、戦国時代の武将伊達政宗もこの地を松島と並ぶ二大景勝地と称賛しています。政宗ゆかりの茶屋跡である「臨泉亭跡」も残されており、訪れる人々に歴史を感じさせています。また、江戸時代には文人・菅江真澄もこの地を訪れ、詩を残しています。

明治時代の1877年（明治10年）には、明治天皇が東北巡幸を行った際、北白川宮が厳美渓を眺望し、これにちなんで「御覧場橋」と名づけられた橋が存在します。その後、この地を訪れた文人たちによる紀行文も数多く残されています。

名物団子

厳美渓は美しい景観だけでなく、名物団子でも知られています。さまざまな店舗が独自のスタイルで団子を提供しており、各店の個性を楽しむことができます。

郭公だんご

その一つが「空飛ぶだんご」として知られる郭公だんごです。この団子は川を渡したロープを使って、団子と代金の受け渡しが行われるユニークなスタイルを採用しています。対岸にある店から直接団子を味わえる楽しみがあります。

滝見だんご

また、滝見だんごは1980年頃に厳美渓河畔でオープンした団子店で、その特徴は「手切りの団子」です。残念ながら、店主の高齢化により2020年12月27日に閉店してしまいましたが、かつての名物として多くの人々に親しまれていました。

いつくしだんご

近隣の「いつくしだんご」という店では、うるち米を原料にした柔らかい食感の団子が評判です。この団子は五串村という地名に由来し、五個の団子が一本の串に刺さっています。訪れた際にはぜひ味わいたい一品です。

その他の名所と交通

厳美渓にかかる道路橋「長者滝橋」は、竹を骨組みに用いたコンクリートの竹筋橋として1939年に建設されました。1987年の強度調査では竹の存在が確認されたものの、確定には至らなかったとのこと。この橋も地域の文化遺産として1999年に登録有形文化財に認定されています。また、訪れる際は岩手県交通の厳美渓線を利用すると便利です。

周辺地域

厳美渓の周辺には、道の駅厳美渓や一関市博物館、サハラガラスパークなどの観光地も点在しており、自然と文化を楽しむことができるエリアです。厳美渓を訪れた際は、周辺にも足を延ばしてみると良いでしょう。

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