反応断面積

反応断面積：原子核反応の確率を測る尺度

原子核物理学において、反応断面積とは、原子核が他の粒子と衝突して核反応を起こす確率の尺度です。まるで標的にボールを当てるように、入射粒子が原子核に衝突する割合を表し、その反応のしやすさを示します。

類似例：ボールと標的

ボールを標的に当てることを想像してみましょう。ボールが標的に当たる確率は、標的の大きさ（断面積）に比例します。原子核反応も同様で、入射粒子が原子核に当たる確率は、原子核の断面積に依存します。この「原子核の断面積」が、まさに反応断面積です。

中性子線が原子核に衝突する反応では、この断面積は特に「中性子断面積」と呼ばれます。

定義と計算

反応断面積は、入射粒子の束（例：中性子線）の性質と、原子核の密度、反応回数から計算できます。

まず、中性子束（neutron flux, φ）を定義します。これは、単位時間・単位面積を通り抜ける中性子の数で、中性子の速度（v）と密度（n）の積（φ=nv）で表されます。

次に、厚さD、面積Sの物質（原子核数密度N）を中性子束が通過するとします。単位時間・単位体積あたりの反応回数Rは、中性子束、原子核数密度、そして反応断面積σに比例します。この関係式は以下のように表せます。

R = σNφ

ここで、σが反応断面積です。単位はcm²です。

この式から反応断面積σを求めることができます。σは、微視的断面積と呼ばれ、単一の原子核についての反応確率を表します。一方、巨視的断面積Σ=σNは、物質全体としての反応確率を表します。この巨視的断面積を用いると、反応回数はR = Σφと簡潔に表せます。この式は原子炉物理において非常に重要です。

反応断面積の種類

反応断面積は、核反応の種類によって異なります。よく使われるのは、中性子による反応で、吸収断面積(σa)と散乱断面積(σb)があります。吸収とは中性子が原子核に吸収される反応、散乱とは中性子が原子核から跳ね返される反応です。

物質における全ての反応断面積の和を全断面積と呼びます。

まとめ

反応断面積は、原子核反応の起こりやすさを示す重要な指標です。その定義と計算式、そして様々な種類について理解することで、原子核反応のメカニズムをより深く理解することができます。特に原子炉物理においては、反応断面積は核反応の予測や制御に不可欠な要素となっています。様々な核反応における断面積のデータは、核データとして体系的にまとめられています。反応断面積の単位として、しばしばバーン(barn)が使われます。1 barn = 10⁻²⁴ cm²です。

もう一度検索