受難 (2013年の映画)

『受難』：奇妙な同居と、心の成長

2013年12月7日公開、岩佐真悠子主演の映画『受難』は、姫野カオルコによる同名小説を原作とするR15+指定作品です。性的描写を含むファンタジーとして注目を集め、恋愛経験のない女性の心の揺れ動きをコミカルかつ繊細に描いた作品となっています。

物語の中心人物は、寂しさを抱えながら日々を過ごすクリスチャンの女性、フランチェス子です。彼女は誕生日にささやかな幸せを願いますが、予想外の出来事が立て続けに起こり、散々な一日となってしまいます。教会で懺悔した直後、彼女の股間にはヒゲ面の奇妙な人面瘡、“古賀”が出現します。

この予想外の出来事から、フランチェス子と古賀の奇妙な同居生活が始まります。口が悪く毒舌な古賀は、フランチェス子の行動や思考を容赦なく批判しますが、同時にフランチェス子の心の内を鋭く突いていきます。フランチェス子は、モデル仲間であるCUSに密かに想いを寄せていましたが、上手く気持ちを伝えられずにいました。CUSが他の女性と交際を始めたことを知ったフランチェス子は、葛藤しながらも、自身の人生と向き合っていくことを決意します。

フランチェス子は、空いた時間を利用して、カップル向けの部屋貸し出しの仕事を始めます。ある日、彼女の部屋を予約したカップルの一方が、予約を間違えて別の男性を連れてきます。その男性こそ、フランチェス子が想いを寄せていたCUSでした。酔ったCUSと、古賀の思わぬ介入によって、フランチェス子とCUSは予期せぬ関係を持ってしまいます。

その後、フランチェス子はCUSの恋人であるいずみと話し合い、誤解のままにしておく方が良いと判断します。CUSへの想いを断ち切ろうとするフランチェス子ですが、古賀は彼女を責め、正直に気持ちを伝えるべきだと諭します。しかし、フランチェス子は、CUSといずみの役に立てたことで満足感を覚えます。やがてCUSといずみの結婚が決まり、フランチェス子は彼らに祝福の言葉を贈り、自身の恋心にピリオドを打ちます。そして、古賀はフランチェス子の体から消えていきます。

フランチェス子を取り巻く登場人物たちも、それぞれに個性的なキャラクターです。モデル仲間であり、フランチェス子と親しいのんこ、彼女の恋人であるまる、そしてCUSの双子の兄弟であるまるなど、彼らとの交流を通して、フランチェス子は自身の成長を遂げていきます。

映画『受難』は、性的な描写を交えながらも、恋愛や人間関係、そして自分自身との葛藤といった普遍的なテーマを丁寧に描いています。コミカルな要素とシリアスな要素が絶妙にバランスされ、観る者の心を揺さぶる作品と言えるでしょう。岩佐真悠子をはじめとするキャスト陣の熱演、そして独特の世界観が魅力的な、忘れがたい一本です。監督は吉田良子、音楽は大友良英が担当し、原作小説の世界観を忠実に、かつ映画独自の表現で再現しています。個性豊かなスタッフ陣の仕事も相まって、作品全体のクオリティを高めていると言えるでしょう。

もう一度検索