古墳島田

古墳時代に女性の間で結われていたとされる特徴的な髪形に「古墳島田」があります。この名称は、後世の江戸時代前期に成立した後期島田髷に結い方が似ていることから付けられたものですが、両者の成立時期には千年以上の長い時間の隔たりがあります。

古墳島田の存在は、同時代の女性をかたどった埴輪から知ることができます。女性型埴輪の中には、この独特な髪形を結っているものが多く見られます。

これまでの研究においては、古墳島田を結っている女性型埴輪は、神に仕える巫女のような特別な立場の女性像を示すと考えられていました。しかし、近年の研究の進展により、この髪形が特定の身分や役割を持つ女性に限定されず、古墳時代のより広い範囲の一般女性たちの間でも結われていた可能性が高いと考えられるようになりました。女性型埴輪全体に比較的広く見られる髪形であることから、単に当時の女性の姿を写したものであり、巫女などと特別視すべきではないという見解が現在の主流となりつつあります。これは、古墳時代の社会や女性の役割に対する理解を深める上で重要な視点の変化と言えます。

古墳島田は、日本の結髪の歴史において、非常に古い段階の、いわばその源流の一つに位置づけられると考えられています。その構造は極めてシンプルです。

基本的な結い方は、まず頭の後ろで髪の毛をまとめて一つに束ねます。次に、束ねた毛先を根元の方、つまり内側へと折り返します。そして、折り返してできた髷の中間あたりを、紐や帯状のものでしっかりと縛って形を固定します。この、髪を束ねて内側に折り返し、中央を縛って髷を作るという基本的な構造は、驚くべきことに、後世の近世島田髷のそれと共通しています。

しかし、古墳島田には近世の島田髷には見られない独特の特徴があります。最も顕著なのは、髷が結ばれる位置です。近世の島田髷が髷を頭頂部近くに高く結い上げるのに対し、古墳島田の髷は前方が額よりも前に突き出るように結ばれ、まるで小さな庇（ひさし）のように見えるのが特徴です。また、髷全体の形にも違いがあります。古墳島田では、折り返した髷の前後を左右に広げるように整え、上から見たときに中央がくびれた、砂時計のような独特の形状に仕上げられます。

髪飾りについては、古墳島田自体に華やかな装飾品がつけられることは少なかったようです。しかし、埴輪の中には、髷の部分に植物の蔓のようなものや、細い帯状のものを巻きつけている表現も見られます。これは、実用的な意味合い（例えば髷の固定）や、あるいは素朴な装飾、あるいは何らかの象徴的な意味を持っていた可能性も考えられます。

シンプルながらも、髷の位置や形状に独特の工夫が見られる古墳島田は、古墳時代という遠い時代を生きた女性たちの日常や美意識を今に伝える貴重な手がかりです。女性型埴輪に見られるその姿は、古代日本の人々の生活の一端を垣間見せてくれるのです。

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