可変焦点レンズ

可変焦点レンズ：焦点距離調整とピントの関係

可変焦点レンズとは、その名の通り、焦点距離を変化させることができる写真レンズです。英語ではバリフォーカルレンズ（variable focal length lens）と呼ばれます。一見、ズームレンズと似ていますが、重要な違いがあります。ズームレンズは焦点距離を変更してもピント位置が変わらないように設計されているのに対し、可変焦点レンズはピント位置が変化します。

ズームレンズとの違いと特徴

可変焦点レンズとズームレンズの最も大きな違いは、焦点距離の変更に伴うピント位置の変化です。ズームレンズでは、ズーム操作によって画角は変化しますが、ピントは比較的安定しています。一方、可変焦点レンズでは、画角を変更すると同時にピントもずれてしまうため、撮影の度にピント合わせが必要となります。

この特性から、可変焦点レンズはズームレンズに比べて軽量で低コスト、そしてF値の向上といったメリットがあります。しかし、ピント調整の手間がかかるというデメリットも存在します。そのため、近年ではオートフォーカス機構の進化によって、監視カメラなどの用途で多く利用されています。

歴史と製品例

日本のカメラメーカーでは、コニカ（現コニカミノルタホールディングス）が1970年に発表、1972年に発売した『バリフォーカルヘキサノンAR35-100mmF2.8』が、可変焦点レンズとして知られる初期の製品の一つです。その他、シグマの『APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM』などの一眼レフカメラ用製品も存在しますが、数は多くありません。

また、ゴトー・サン光機は1980年代に『ダブルフォーカスレンズ』(28-35mmF3.5-3.8、85-135mmF4)を販売していました。このレンズは、画角操作に伴いピント位置が移動しますが、広角端と望遠端でのみピント位置が一致するように設計されていました。そのため、広角端と望遠端の間で一度に切り替える場合に限っては、ピントの再調整が不要という特徴がありました。

現代における活用

現代では、オートフォーカス機能の高度化により、可変焦点レンズは監視カメラの分野で広く利用されています。タムロン、トキナー、三菱電機など、多くのメーカーが監視カメラ用の可変焦点レンズを製造・販売しています。これらのレンズは、常に最適なピントを維持し、広い範囲をカバーする必要がある監視システムに適しています。

まとめ

可変焦点レンズは、ズームレンズとは異なる特性を持つレンズです。ピント位置が変化するというデメリットはあるものの、軽量、低コスト、高F値といったメリットも持ち合わせています。近年ではオートフォーカス技術の発展により、監視カメラなど特定の用途において広く活用されています。その歴史や特性を理解することで、カメラレンズ選びの幅が広がるでしょう。

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