可能動詞

可能動詞：日本語の文法における興味深い動詞変化

現代日本語で、動作の可能を表す際に用いられる「可能動詞」について詳しく見ていきましょう。

可能動詞とは？

可能動詞は、五段活用動詞が変化してできた下一段活用の動詞で、「～できる」という意味を持ちます。「書く」が「書ける」、「打つ」が「打てる」といった具合です。例えば、「行ける」は「行くことができる」を意味します。室町時代に発生し、徐々に従来の「～れる」「～られる」という助動詞による可能表現に取って代わる形で広まりました。

可能動詞と「～れる／～られる」

「行ける」と似た意味を持つ表現として「行かれる」があります。「行ける」が可能な意味のみを持つのに対し、「行かれる」は可能、自発、尊敬、受身の4つの意味を持ちます。これは、古語の「～る」「～らる」に由来する「～れる」「～られる」という助動詞と関連しますが、「行ける」のような可能動詞の語源は明確ではありません。

大きく2つの説があります。1つは、「知るる（知れる）」のように、元々あった四段（後に五段）活用動詞に、下二段（後に下一段）活用の自発動詞的な意味が加わったという説です。もう1つは、「行き得る」のような「連用形＋得る」という表現が変化したという説です。

「する」に対する「できる」（例：「使用する」→「使用できる」）も、可能動詞と同様に機能します。ただし、可能動詞は命令形になりにくいという特徴があります。「読めろ」「走れろ」といった命令形はほとんど用いられません。

可能表現の歴史的変化

古くは、可能を表すのに助動詞「る」「らる」（現代の「れる」「られる」）を用いていました。鎌倉時代頃は「読む」の可能は「読まるる（読まれる）」の形のみでした。可能動詞が出現したのは室町時代ですが、一般的に使われるようになったのは近代になってからです。

可能動詞の普及に伴い、逆に従来の「～れる」「～られる」による可能表現が疑問視される風潮も生まれています。「○○方面へは行かれません」という道路標識を「間違いではないか」と問い合わせるケースもあるほどです。しかし、「行かれる」など、一部の「動詞＋れる／られる」は可能の意味で現在もよく使われています。

類似の動詞：自発動詞

可能動詞とは別に、五段活用動詞に相当する下一段活用（古くは下二段活用）の自発動詞も存在します。「切る」に対する「切れる」、「裂く」に対する「裂ける」などです。「気が置けない」も、可能動詞とは少し異なる「気が置かれない」という意味合いの自発動詞の一種と言えるでしょう。

ら抜き言葉との関連

「ら抜き言葉」は、上一段、下一段、カ行変格活用動詞に可能の助動詞を付ける際に「られる」を「れる」とする現象です。これは、ラ行五段活用動詞の可能動詞と混同して発生したと考えられています。ただし、受身、尊敬、自発の意味では「ら抜き言葉」は発生しません。

まとめ

可能動詞は、日本語の文法において興味深く、複雑な歴史を持つ動詞変化です。その成立過程、他の可能表現との関係、そして現代における用法を理解することで、より深く日本語を理解できるでしょう。ら抜き言葉との関連も踏まえ、適切な表現を選択することが重要です。

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