台湾第四原子力発電所

台湾第四原子力発電所、通称「核四」は、台湾北部の新北市貢寮区に位置する原子力発電所です。台湾電力によって運営されています。この発電所は、台湾における4番目の原発として計画され、当初は経済成長を背景に建設が進められました。しかし、その建設過程は多くの困難と論争に満ちています。

建設の経緯と問題点

直接の受注元はゼネラル・エレクトリックですが、原子炉は日本の日立製作所（1号機）と東芝（2号機）、発電機は三菱重工業が担当するなど、日本からの輸出原発という側面を持っています。当初の計画では、1号機が2006年、2号機が2007年に営業運転を開始する予定でしたが、住民の反対運動や度重なる工事上のトラブルにより、建設は大幅に遅延しました。

馬英九政権下では、2011年の「建国100年行事」に合わせて運転開始を目指しましたが、1号機の中央制御室で火災が発生し、計画はさらに遅れることになりました。2012年には、台湾電力が相次ぐトラブルを自力で解決できず、日立製作所などの日米企業に全面的な支援を求める事態にまで発展しました。

2013年には、江宜樺行政院長が建設の是非を問う住民投票の実施を発表しました。この住民投票は、全有権者の過半数が参加し、その過半数が賛成することで成立するという厳しい条件が課されました。この住民投票を前に、台北をはじめとする各地で大規模なデモが行われ、多くの著名人も参加しました。

2014年には、馬英九総統が1号機の稼働凍結と2号機の工事停止を発表しましたが、江宜樺行政院長は「プロジェクト中止や廃棄を意味するものではない」と述べました。その後、2015年7月1日に正式に建設が凍結されました。台湾電力は、凍結期間中に機器の維持に多額の費用を投じる予定でしたが、市民団体からは「無駄遣い」だと批判されました。さらに、建設契約を結んだゼネラル・エレクトリックは、台湾電力に対し、実施済み作業分の支払いを求めて国際仲裁裁判所に調停を申し立てました。

反対運動と安全性の懸念

台湾第四原子力発電所に対する反対運動は、その安全性への懸念に端を発しています。台湾は地震多発地帯であり、発電所の近隣には民家や町が密集しているため、事故が発生した場合の影響が非常に大きいと指摘されています。また、建設中に何度も中断しており、部品の腐食などが懸念されています。

さらに、建設地の決定が戒厳令下で住民への十分な説明なしに行われたことや、その後の住民投票で圧倒的な反対票が投じられたことから、人権問題としても問題視されています。また、日本から原子炉が輸出された経緯についても、日本と台湾の国交がないため、米国を経由した不透明な取引が行われたとの指摘があります。

加えて、建設許可が出た後に原子炉の出力が変更されたにも関わらず、再度影響調査が行われなかったことも、国内法に抵触するとして問題視されています。地元住民からは、この地に建設された原発が「第二の侵略」であるという声も上がっています。

脱原発政策との関連

政権交代後、蔡英文総統は民進党の党是である「脱原発」を明確に打ち出し、2025年までに原子力発電を全廃する脱原発法を成立させました。この政策は、台湾第四原子力発電所の将来にも大きな影響を与えています。現在は建設が凍結されている状態ですが、今後の動向が注目されます。

まとめ

台湾第四原子力発電所は、その建設当初から多くの問題を抱え、安全性や人権、法的な問題など様々な側面から議論の対象となっています。台湾の脱原発政策とも深く関わるこの発電所の動向は、今後の台湾のエネルギー政策を考える上で重要な要素となるでしょう。

付記

この発電所が立地する貢寮区には、抗日記念碑がある塩寮海浜公園が隣接しています。

関連情報

• - 貢寮区 - 台湾第四原子力発電所が立地している区。
• - 台湾第一原子力発電所
• - 台湾第二原子力発電所
• - 台湾第三原子力発電所

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