台湾総督府法務部

台湾総督府法務部（たいわんそうとくふほうむぶ）は、1895年から1945年にかけて存在した台湾総督府の内部部局の一つで、台湾における司法に関する行政事務全般を統括していました。この機関の名称や組織形態は、統治初期から終焉に至るまで、幾度かの重要な変遷を遂げました。

創設と初期の模索

台湾総督府が設置された明治28年（1895年）5月、総督府の民政局内に「司法部」が設けられたのが、法務部の組織の始まりと言えます。しかし、そのわずか3ヶ月後の同年8月には司法部は廃止され、民政局の局長部に民事と刑事に関する事務を担当する「民刑課」が置かれる形となりました。その後、明治29年（1896年）4月には、民政局に再び「法務部」が設置され、内部には民事課と刑事課が設けられました。ところが、この法務部も比較的短期間で再編され、明治30年（1897年）11月には廃止されて、民政局内の「法務課」として機能が継続されることになります。

民政部時代とその後の変遷

明治31年（1898年）6月には民政局が民政部へと改組され、法務課は引き続きこの民政部に置かれました。その後、明治34年（1901年）11月には民政部に総務局が設置され、法務課はその総務局に所属することとなりました。さらに、明治42年（1909年）10月には総務局が内務局に改編されましたが、法務課の所属はこの内務局へと引き継がれます。

組織が大きく再編されたのは明治44年（1911年）10月です。この時、民政部内に再び「法務部」が設置され、民事・刑事事務を扱う民刑課と、監獄に関する事務を扱う監獄課が置かれました。大正8年（1919年）8月には、民政部が廃止されるという大きな組織改編が行われ、法務部は台湾総督府に直結する内部部局として「台湾総督府法務部」という名称になりました。大正13年（1924年）には内部組織が民刑課と行刑課の二課体制となりましたが、同年12月にはこの法務部自体が廃止され、司法関連の事務は総督官房に置かれた「法務課」が担うことになりました。

終焉期における法務局・法務部

太平洋戦争が始まる前の昭和15年（1940年）3月、総督府の組織として「法務局」が設置され、再び民刑課と行刑課が置かれました。さらに戦時体制下の昭和17年（1942年）11月には、この法務局が「法務部」へと改編され、終戦までこの名称が維持されることになります。この時期の法務部も、内部には民刑課と行刑課が置かれていました。台湾総督府が廃止される昭和20年（1945年）10月まで、法務部は台湾における司法行政の中枢として機能しました。

役割と関連機関

台湾総督府法務部は、台湾における法令の解釈や適用、司法制度の企画・運営、検察行政、刑務行政などを所管していました。その業務遂行にあたっては、台湾総督府の司法機関である台湾総督府法院（高等法院、地方法院）や検察局、そして刑務所などの所属官署と密接に連携していました。

このように、台湾総督府法務部とその前身・後身組織は、設置当初から終焉に至るまで、台湾統治期における司法行政体制の中核を形成し、その組織や名称は、時代の変遷や統治方針の変化に合わせて目まぐるしく改編されていきました。

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