台湾総督府軍務局

台湾総督府軍務局とその変遷

台湾総督府軍務局は、台湾総督が管轄区域内の陸海軍に対して持つ権限に基づき、府内に設置された軍政および軍令を司る中心的な組織でした。この名称は主に1896年4月から1897年10月までの特定の期間に存在した部局を指しますが、広義には台湾総督府が設置された1895年5月から、総督への軍事権委任が解除された1919年8月までの約24年間にわたり、軍事関連の業務を担った一連の組織全体を指すことがあります。

創設期の組織

台湾総督府は1895年（明治28年）5月に設置されました。初代総督には、管轄区域内の陸海軍を指揮する権限が付与され、これを執行するため、総督府内に陸軍局と海軍局が設けられました。それぞれの局には長官と幕僚が配置されていました。

同年8月6日には、台湾総督府条例が施行され、総督の幕僚部門として参謀部と副官部が置かれました。副官部はさらに文書、人事、用度を担当する三つの課に分かれていました。陸軍局には砲兵部、工兵部、憲兵部、監督部、軍医部、法官部、電信部、郵便部といった専門部署が置かれ、海軍局と共に総督の軍事権執行を支えました。

軍務局の設置と廃止

1896年（明治29年）4月1日、従来の陸軍局と海軍局に代わり、新たに軍務局が設置されました。軍務局には局長と副官が置かれ、その下には陸軍部と海軍部が設けられました。陸軍部は第一課から第四課、海軍部は第一課と第二課に分かれて業務を遂行しました。

しかし、この軍務局は短期間で改編されることになります。1897年（明治30年）11月1日、軍務局は廃止され、陸軍と海軍の組織はそれぞれ陸軍幕僚、海軍幕僚として再編されました。

陸軍部門の変遷

軍務局廃止後に設けられた陸軍幕僚は、参謀長をトップに、参謀部と副官部で構成されました。この組織体制はしばらく続きましたが、1907年（明治40年）10月14日には陸軍幕僚が廃止され、代わって陸軍部が設置されました。陸軍部は参謀長を長とし、その下に幕僚部門として参謀部と副官部を置きました。さらに、法官部、経理部、軍医部、獣医部といった専門部署も設けられました。陸軍兵器部は1919年3月7日に台北市内の指定地に移転しています。この陸軍部は、1919年8月20日に廃止されるまで存続しました。

海軍部門の変遷

一方、海軍部門は軍務局廃止後、1897年11月1日に海軍幕僚として再編されました。当初、海軍幕僚には参謀長を筆頭に、出師準備・作戦計画担当の参謀、人事・庶務担当の副官、そして機関長、軍医長、主計長が置かれていました。

その後、組織の規模が縮小されます。1901年（明治34年）7月4日には、参謀長、事務担当の参謀、副官、主計長となりました。さらに1903年（明治36年）11月6日には主計長が廃止され、最終的には参謀長、事務担当の参謀、副官のみが残る体制となりました。この組織は1919年8月20日に廃止されるまで機能しました。

組織の終焉と改編

1919年（大正8年）8月20日、台湾総督への軍事権委任が解除されたことに伴い、台湾総督府の軍事組織も大きく再編されました。陸軍部と海軍幕僚は廃止され、陸軍部は新たに台湾軍へと改編されました。この改編により、総督は台湾軍司令官に対して兵力使用を請求する形式へと役割が変更されました。

主要な歴代役職者

台湾総督府の軍事組織において、重要な役割を担った歴代の役職者は以下の通りです。

総督府参謀長 / 総督参謀長:
大島 久直 陸軍少将：1895年5月23日 - 1896年4月1日

軍務局長:
立見 尚文 陸軍少将：1896年4月1日 - 1897年11月1日

陸軍部門長:
陸軍局長官: 大島 久直 少将：1895年5月23日 - 1895年8月6日 (兼任)
陸軍局長: 大島 久直 少将：1895年8月6日 - 1896年4月1日 (兼任)
軍務局陸軍部長: 立見 尚文 少将：1896年4月1日 - 1897年11月1日 (兼任)

陸軍幕僚参謀長:
立見 尚文 少将：1897年11月1日 - 1898年10月1日
木越 安綱 少将：1898年10月1日 - 1900年4月25日
中村 覚 少将：1900年4月25日 - 1902年3月10日
武田 秀山 少将：1902年3月10日 - 1902年12月24日
谷田 文衛 少将：1903年1月13日 - 1907年2月4日
宮本 照明 少将：1907年2月4日 - 1907年10月14日

陸軍部参謀長:
宮本 照明 少将：1907年10月14日 - 1912年8月3日
足立 愛蔵 少将：1912年8月3日 - 1913年7月3日
木下 宇三郎 少将：1913年7月3日 - 1916年1月21日
有田 恕 少将：1916年1月21日 - 1917年8月6日
山田 陸槌 少将：1917年8月6日 - 1918年8月19日
東 乙彦 少将：1918年8月19日 - 1918年8月19日
曽田 孝一郎 少将：1918年11月18日 - 1919年8月20日

海軍部門長:
海軍局長官: 田中 綱常 予備役少将：1895年5月21日 -
海軍局長: 角田 秀松 少将：1895年8月15日 - 1896年4月1日
軍務局海軍部長: 角田 秀松 少将：1896年4月1日 - 1897年11月1日

海軍参謀長:
角田 秀松 少将：1897年11月1日 - 1897年12月27日
黒岡 帯刀 少将：1897年12月27日 - 1901年7月4日
成川 揆 大佐：1901年7月4日 - 1903年7月7日
山縣 文蔵 中佐：1903年7月7日 - 1905年3月15日
山本 正勝 中佐：1905年3月15日 - 1905年6月14日
宮地 貞辰 大佐：1905年6月14日 - 1906年8月30日
羽喰 政次郎 大佐：1906年8月30日 - 1907年11月15日
土山 哲三 大佐：1907年11月15日 - 1909年12月1日
西山 実親 大佐：1909年12月1日 - 1910年9月28日
東郷 吉太郎 大佐：1910年9月28日 - 1912年6月18日
秀島 成忠 大佐：1912年6月18日 - 1914年5月29日
田所 広海 大佐：1914年5月29日 - 1914年12月1日
秋沢 芳馬 大佐：1914年12月1日 - 1916年12月1日
増田 幸一 大佐：1916年12月1日 - 1918年5月3日
* 増田 高頼 大佐：1918年5月3日 - 1919年8月20日

もう一度検索