各駅停車 (漫画)

『各駅停車』は、谷川史子によって描かれた短編漫画作品です。1992年に集英社の『りぼんオリジナル』にて発表された全3話からなるオムニバス形式で、鎌倉を舞台にした恋愛群像劇が展開されます。

物語は、主人公である女子高生の小津深雪が、理由も告げられずに恋人と別れてしまうところから始まります。失恋の痛手から立ち直れない深雪の前に現れたのは、なんと元彼に瓜二つの後輩、夏目康でした。康は、明るく真っ直ぐな性格で深雪にアプローチをかけ、彼女の閉ざされた心を धीरे々に 開いていきます。

康の積極的なアプローチは、深雪だけでなく、彼女の友人たちの恋愛にも影響を与え始めます。例えば、康に恋心を抱く体操部員の藤沢まみこは、深雪と康の仲を邪魔しようと画策します。彼女には、過去の経験からくる心の傷があり、それが2人の関係を複雑にする要因となります。一方、まみこの親友である小町道子は、愛犬の散歩中に康の兄である夏目昇と出会い、少しずつ惹かれ合っていきます。

物語に登場するキャラクターたちは、それぞれが複雑な感情を抱えながら、恋愛を通して成長していきます。深雪は、過去のトラウマを乗り越え、新しい恋に踏み出す勇気を धीरे々に 取り戻していきます。康は、一途な想いを貫き、深雪の心を掴むために努力します。まみこは、過去の傷と向き合い、自分自身を解放することで、新たな幸せを見つけることができるのか。

『各駅停車』の魅力は、繊細な心理描写と、鎌倉の美しい風景描写が組み合わさることで生まれる、独特の雰囲気です。江ノ電沿線や観光名所がデートコースとして登場し、作品を読んだ人が実際に鎌倉を訪れたくなるような、そんな魅力に溢れています。また、登場人物たちの心情が丁寧に描かれており、読者は彼らの喜びや悲しみに共感し、まるで自分のことのように感じることができます。

単行本は、りぼんマスコットコミックスから1992年に刊行されましたが、現在は絶版となっています。しかし、2007年には、谷川史子のオムニバス作品集『君と僕の街で』に収録され、再び多くの読者の手に取られるようになりました。この作品集には、『各駅停車』の他にも、『両手でもたりない』などの短編作品が収録されています。

『各駅停車』は、失恋から始まる恋愛、友情、そして成長を描いた、珠玉の短編漫画作品です。鎌倉の美しい風景と共に、登場人物たちの繊細な心の機微が描かれており、読者の心に深く残る作品と言えるでしょう。

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