合格電報

合格電報：受験生と電報が紡いだ時代

合格電報とは、昭和30年代から平成の初め頃にかけて、大学受験の合否を知らせるために使われていた電報のことです。現代では想像し難い手法ですが、当時、多くの受験生、特に遠隔地に住む受験生にとって、合否を知るまでの時間は大きな精神的負担でした。大学構内に掲示された受験番号を確認するか、合否通知を待つしか方法がなく、結果が出るまでの不安は計り知れませんでした。

そこで、早く合否を知りたいという受験生のニーズに応える形で生まれたのが、合格電報です。1956年、早稲田大学で始まったとされ、大学近くの知人に受験番号を確認してもらい、その結果を電報で知らせるという仕組みでした。この際、合格を伝える言葉として「サクラサク」が使われたことが、合格電報を全国的に広めるきっかけとなりました。桜の開花を喜びの象徴として捉え、合格の知らせに用いるようになったのです。「サクラサク」は、現在でも受験合格を祝う言葉として広く浸透しています。

合格電報は、大学当局が公式に運営していたものではありませんでした。実際には、「電報屋」と呼ばれる学生アルバイトが、サークルの活動資金や私費を稼ぐ目的で、この業務を請け負っていました。そのため、合格電報の文面は大学ごとに異なり、地域色豊かな表現も数多く見られました。大学によっては独自の言葉や表現を用いて、合格の喜びを伝える工夫が凝らされていました。

しかし、1984年頃からは状況が変わります。郵政省が電子メールの普及を目指し、大学入試レタックスを導入したのです。これは、合格者の受験番号一覧を電子的に送付し、受験生が自分の番号を確認することで合否を知る仕組みです。大学側にとっても、受験生からの問い合わせを減らし、情報化に対応する上で有効な手段でした。加えて、大学当局が希望者に対して電子メールで合格発表を行うことも増えてきました。

これらの変化により、電報による合否通知の需要は減少。学生アルバイトによる合格電報の取り扱いは徐々に減っていき、やがては消滅していきました。かつて受験生と電報屋、そして「サクラサク」というフレーズが織りなした、独特の時代は幕を閉じました。しかし、「サクラサク」という言葉は、今もなお、多くの受験生に希望と喜びを与え続けています。

合格電報の普及には、出張入試も影響を与えていたと考えられます。出張入試により、遠隔地の受験生も比較的容易に大学受験に参加できるようになり、合格電報の需要が高まった側面もあるでしょう。合格電報という、今では懐かしいシステムは、時代の変化とともに姿を消しましたが、受験生たちの喜びと期待を伝える重要な役割を果たしていたと言えるでしょう。合格電報の盛んな時代を知る人々にとって、それは、青春時代を彩る、独特の思い出として記憶されているに違いありません。電報を受け取ったときの喜び、そして電報を届ける学生たちの活気、それらは日本の高等教育史における興味深い一コマと言えるでしょう。また、合格発表を待つドキドキ感や、合格が分かった時の高揚感を伝える上でも重要な役割を果たしていたと言えるでしょう。胴上げと共に、受験の喜びを分かち合う象徴的な出来事として、合格電報は日本の大学入試の歴史に刻まれています。

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