吉志部神社

吉志部神社について

吉志部神社（きしべじんじゃ）は、大阪府吹田市岸部北に位置する神社で、紫金山公園の一角に鎮座しています。かつては村社であり、地域の人々から崇敬を集めてきました。

祭神

ご祭神は、中央に天照皇大神と豊受大神、左座に八幡大神、素盞嗚大神、稲荷大神、右座には春日大神、住吉大神、蛭子大神がお祀りされています。

歴史

創建時期は明確ではありませんが、平安時代には既に存在していたと考えられています。この地は古代より「吉志部の里」と呼ばれ、奈良時代には瓦や須恵器を焼いた窯跡（吉志部瓦窯跡）が存在した歴史ある場所です。

社伝によれば、崇神天皇の時代に大和国から奉遷されたのが始まりとされ、当初は「大神宮」と呼ばれていました。その後、安部難波吉志一族によって守護神として崇敬されてきたと伝えられています。応仁の乱で社殿が焼失するも、奇跡的に残った神鏡が再び祀られ、文明元（1469年）に本殿が再建されました。その後も、天文3年（1534年）に中興されています。

江戸時代には、天照皇大神を主祭神とする七柱の神々が祀られ、「七社明神」と呼ばれるようになりました。慶長15年（1610年）には、吉志部氏の末裔である兄弟によって本殿が再建され、将軍徳川秀忠の支援により、京都・方広寺の余材を用いた社殿造営が許可されるという出来事がありました。正徳3年（1713年）には、豊受大神が加えられ、八社明神または鎮守八社と呼ばれるようになりました。

明治3年（1870年）の神仏分離により吉志部神社と改称し、村社となりました。大正時代には拝殿が神門に転用され、新たに拝殿と幣殿が本殿覆屋と一体化されました。

慶長15年（1610年）に建てられた本殿は「七間社流造」という珍しい形式で、吹田市内最古の木造建築物として重要文化財に指定されていましたが、2008年（平成20年）に放火により焼失。その後、2011年（平成23年）に再建されました。

釈迦ヶ池遊猟事件

神社の裏手にある釈迦ヶ池では、かつてカモ猟が行われていましたが、1880年（明治13年）に来日中のプロイセン王国のハインリヒ王子が、禁じられていた銃を使用し、カモを撃ったため、付近住民に殴られる事件が起こりました。この事件は外交問題に発展し、日本政府は事件関係者の謝罪と警察官の免職で事態を収拾しました。さらに、この事件を報道しようとした新聞記者が逮捕されるなど、明治初期の日本外交の脆弱さを示す出来事となりました。

考証

社伝にある「崇神天皇の御代に大和の瑞籬より」という記述は、崇神天皇の皇女が奉祀した時期と符合しますが、吉志部神社への遷宮の記録は記紀には見当たりません。創建当初の祭神は天照大神のみと考えられ、他の神々は後世に合祀されたものと考えられています。

境内

本殿：2011年（平成23年）に再建。覆屋に覆われています。
拝殿：本殿と同時期に再建。
社務所
神門：近年再建。
摂末社：大川神社、御霊社、愛宕之宮・大国主之神・事比羅神・天水分神

文化財

国指定史跡：吉志部瓦窯跡
吹田市指定無形民俗文化財：吉志部神社のどんじ

祭事

年2回の例大祭（春と秋）や菊花献上祭などが行われます。

交通

JR東海道本線 岸辺駅より徒歩約20分
* 阪急バス「紫金山公園前」から徒歩すぐ


吉志部神社は、古代からの歴史と、幾多の困難を乗り越えてきた人々の想いが込められた、地域にとって大切な存在です。

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