吉田愛

吉田愛：日本のセーリング界を牽引した四度のオリンピアン

吉田愛（よしだ あい、1980年11月5日生まれ）は、東京都八王子市出身の著名なセーリング選手です。旧姓は近藤。女子470級のスキッパーとして、日本のセーリング界に数々の輝かしい実績をもたらしました。神奈川県相模原市で幼少期を過ごし、八王子市立椚田小学校、国立音楽大学附属中学校・高等学校を経て、日本大学生物資源科学部を卒業しています。3歳からピアノを習っており、これが趣味・特技となっています。

セーリングとの出会いは小学1年生の時でした。この競技に情熱を燃やし、大学時代には全日本学生女子選手権（女子インカレ）で前人未踏の3連覇を達成するなど、学生トップ選手としての地位を確立しました。

社会人となり、アビームコンサルティング人事部に所属しながら競技を続けました。初期には鎌田奈緒子選手とペアを組み、「コンカマ」の愛称で親しまれました。このコンビは国内外で目覚ましい活躍を見せ、2006年の世界選手権で準優勝、2007年には全日本470級ヨット選手権大会で女子ペアとしては史上初の優勝を果たしました。さらに、2008年6月にドイツで開催された重要な国際大会、キール・ウイークでの優勝を経て、このペアは世界ランキング1位に上り詰めました。

初のオリンピック出場とペアの変遷

コンカマペアは、2008年の北京オリンピックに日本代表として出場しました。しかし、本番では安定した成績を残すことが難しく、10レース中2レースでトップフィニッシュを飾る一方で、他のレースでは順位が振るわず、結果として19チーム中の14位という成績で大会を終えました。北京オリンピック後、パートナーの鎌田選手が現役を引退したため、吉田選手は新たな道を歩むことになります。

続いて、2012年のロンドンオリンピックでは、田畑和歌子選手とペアを組みました。この大会でも上位進出を目指しましたが、惜しくも最終レース（メダルレース）への進出は叶わず、総合14位にとどまりました。ロンドン大会後、田畑選手はシングルハンドの種目に転向しました。

所属変更と新たな黄金ペア

2013年度からは、勤務先をアビームコンサルティングからベネッセセーリングチームへと移籍しました。この転機を境に、吉岡美帆選手と新たなペアを結成します。この吉岡選手とのコンビが、吉田選手のキャリアにおける新たな黄金期を築くことになります。

2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、吉岡選手とのペアで出場しました。初戦からトップフィニッシュを飾るなど、10レース中2レースで1位を獲得する活躍を見せました。特に得意とする強風コンディションのレースでは確実に上位につけ、ポイントを重ねました。最終レース（メダルレース）では、銀メダル獲得も射程圏内でしたが、惜しくも順位を伸ばせず7位でフィニッシュし、総合5位で大会を終えました。メダルには届きませんでしたが、着実に世界のトップレベルに位置することを示しました。

世界選手権制覇と地元開催のオリンピック

吉岡選手とのペアは、リオ五輪後も進化を続けました。その集大成ともいえるのが、2018年にデンマークのオーフスで開催された世界選手権です。この大会で、吉田・吉岡ペアは女子470級において日本女子ペアとしては史上初の優勝という歴史的な快挙を成し遂げました。さらに、地元日本での開催となった2019年江の島世界選手権では銀メダルを獲得し、この実績により自身四度目となるオリンピック、2020年東京オリンピック代表に内定しました。

パンデミックの影響で一年延期された2021年の東京オリンピックでも、メダル獲得の期待を背負って出場しました。メダルレースまでメダル獲得の可能性を残して戦いましたが、最終的には総合7位という結果でした。

家族について

吉田選手は、2012年末に同じくセーリング選手でロンドンオリンピック男子470級日本代表であった吉田雄悟氏と結婚しています。夫である吉田雄悟氏は、後に吉田選手のコーチとしても彼女のキャリアを支えました。2017年6月には長男を出産し、競技と家庭を両立させながら世界の舞台で戦い続けました。

長年にわたり日本の女子470級を牽引し、数々の記録を打ち立ててきた吉田愛選手は、その不屈の精神と高い技術で、後進のセーラーたちに大きな影響を与えています。

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