吉野鉄道電機51形電気機関車

吉野鉄道電機51形電気機関車について

吉野鉄道電機51形電気機関車は、1929年に川崎車輌によって製造され、吉野鉄道（現在の近鉄吉野線の前身）が運用した電気機関車の一つです。この形式は、大阪電気軌道との合併や関西急行鉄道への移行を経て、近畿日本鉄道に引き継がれました。特徴としては、大型の箱形車体と強力な電動機搭載により、主に木材輸送に活躍しました。また、戦後の改番や改造に伴い、デ51形としても知られています。

製造の背景

吉野鉄道の電機51形は、1929年3月29日に大阪鉄道による古市－久米寺間の開業と、これに伴う直通運転のために製造されました。この時期の電機は、大阪鉄道との直通運転を考慮し、強化された軌道に対応するため、当時の私鉄としては珍しい大型の電気機関車が求められました。

その結果、製造されたのが電機51形で、比較的大出力の電動機を搭載し、48tの自重を持つこととなりました。これにより、吉野鉄道は新たな運行形態への対応が可能となりました。

車両の特徴

電機51形は、全鋼製のリベット組み立て構造を持ち、八角形の平面形状が特徴的な箱形車体です。妻面には強い後退角があり、デザイン的には非常に個性的な外観をしています。特に、船舶のような真円形の小型明かり取り窓が、機械室部分に配置されている点が注目されます。

屋根の形状もユニークで、ひさしの役割を果たすようにデザインされ、前照灯が中央に設置されています。この独特なデザインは、欧州の優雅さを感じさせるものでもあります。また、台枠が露出する無骨な構造ながらも、全体として印象的な造形を実現しています。

技術的詳述

この電気機関車は、川崎造船所が制作したK-7-2003-Aという型式の直流電動機を使用しており、各台車に2基ずつ、合計4基を搭載しています。これにより、高い出力と効率性を実現しています。

また、モーターの駆動装置には80:17の歯数比が採用されており、力強い牽引力を発揮します。制御装置には電空単位スイッチ式が用いられており、旅客列車の牽引にも対応しています。これらの機器は、主に山岳線における運用を念頭に設計されています。

運用に関する状況

新造当初から、吉野鉄道線では主に木材を中心とした貨物列車に使用されていましたが、観桜シーズンには旅客列車の牽引も行っていました。その後の時代には、関西急行鉄道、近畿日本鉄道での運用も行われ、長い間現役でした。特に、近鉄では吉野線での活躍が目立ちました。

最終的には、1984年に老朽化により除籍され、解体されることとなり、残念ながら現存することはありません。

まとめ

吉野鉄道電機51形は、伝説的な電気機関車の一つとして、当時の鉄道技術を象徴する存在でした。特徴的なデザインと高い性能を備えたこの車両は、今でも多くの鉄道ファンに愛され続けています。

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