同和地区

同和地区とは何か？

「同和地区」は、同和対策事業の対象地域として指定された地区を指す行政用語です。しかし、その定義は明確ではなく、被差別部落と完全に一致するわけではありません。被差別部落という概念は包括的な定義がなく、総称的に使われるのに対し、「同和地区」は行政上の用語として用いられていました。

同和対策事業は2002年に終了したため、現在では「旧同和地区」と呼ばれることも多く、特に日本共産党などがこの呼称を用いています。一方、同和対策事業の対象にならなかった被差別部落は「未指定地区」や「未解放部落」と呼ばれています。これらの地域は、歴史的、社会的な理由から生活環境の改善が遅れてきた地域であるとされています。

「同和地区」という呼称は、戦前の1941年に遡りますが、同和対策事業の根拠法である同和対策事業特別措置法や、後継の地域改善対策特別措置法には「同和地区」という言葉は登場しません。これらの法律では、「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域」という表現が用いられています。

しかし、同和対策審議会の答申では、1961年に「同和地区」という用語が使用されており、同答申では「未解放部落」や「部落」と呼ばれ、差別の対象となっている地域として「同和地区」を言及しています。このことから、「同和地区」は行政用語として、被差別部落と同義と解釈されることもありますが、必ずしも一致するわけではありません。

実際、地元住民から「寝た子を起こすな」という反対意見が強く、同和地区と認定されなかった地域も存在します。これらの未指定地区の正確な数は不明ですが、部落解放同盟は全国で1000地区以上に上ると推定し、同和対策の実施を求めています。しかし、政府は1987年以降、新たな地区の指定を行っていません。

同和地区の現状

1993年の総務庁（現・総務省）の調査によると、同和地区の数は全国で4533地区でした。その中でも、福岡県が606地区と最も多く、次いで広島県472地区、愛媛県457地区と続きます。滋賀県のように、地区数は少ないものの、広大な面積が同和地区に指定されていた地域もありました。

同和対策事業の対象地域指定の過程で、住民への通知が遅れるなどの問題も発生していました。例えば、日本共産党の東中光雄議員は、1973年に大阪市で対象地域が指定された際、年末まで住民への通知が行われなかった事例を挙げています。

このように、「同和地区」は歴史的、社会的な背景を持つ複雑な概念です。単純に被差別部落と同義と捉えるのではなく、その歴史的経緯や、現在の状況を踏まえた上で理解する必要があります。また、未指定地区の存在も考慮し、多角的な視点から問題を考えることが重要です。

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