同期信号

同期信号とは

同期信号とは、映像信号やデジタル信号を伝送する際に、受信側で信号の読み取りタイミングを正確に把握するために用いられる信号です。この信号があることで、データや映像が正確に再現され、情報の損失や乱れを防ぐことができます。

デジタル信号伝送における同期信号

デジタル信号の伝送では、情報を構成する「ビット」を正確に読み取るために、同期信号が不可欠です。同期信号には大きく分けて2つの方式があります。

1. 同期通信方式：データ伝送用の信号線とは別に、同期信号専用の信号線を設けて、ビットの読み取りタイミングを伝送します。この方式は、常に正確なタイミングでデータの送受信が可能ですが、信号線が多くなるというデメリットがあります。
2. 非同期通信方式：データのまとまり（通常1バイト）ごとに、開始と終了を示す同期用信号を付加して伝送します。この方式では、専用の同期信号線が不要なため、配線を簡略化できます。

映像信号伝送における同期信号

映像信号の場合、水平同期信号と垂直同期信号という2種類の同期信号が必要です。

水平同期信号：映像の水平方向の走査タイミングを制御します。これにより、画面の横方向の乱れを防ぎます。
垂直同期信号：映像の垂直方向の走査タイミングを制御します。これにより、画面の縦方向の乱れを防ぎます。

特に、放送や業務用の映像機器では、複数の機器から送られてくる映像を切り替える際に、各映像のタイミングを同期させておくことが重要です。同期がずれると画面が乱れてしまうため、同期信号を基準に映像の送出タイミングを合わせる必要があります。

放送局では、局内の基準となる同期信号を生成し、これを各スタジオや調整室に分配します。各部屋では、この基準信号に合わせてさらに同期信号を再生成し、カメラやビデオデッキなどの映像機器に分配することで、局内全体の映像タイミングを揃えています。

映像信号には、各同期信号と、RGB方式なら各色の輝度信号、YIQ方式なら輝度信号と各色差信号を合成したコンポジット映像信号と、それぞれの信号が独立したコンポーネント映像信号があります。

アナログ映像における同期信号

NTSC方式のアナログ映像では、水平同期周波数約15.75kHz、垂直同期周波数約60Hzの同期信号を使用します。これらの同期信号が乱れると、走査線の横揺れなど、映像に大きな影響が出ます。

デジタル映像における同期信号

デジタル映像信号には、アナログコンポジット映像信号をデジタル化したデジタルコンポジット映像信号と、各信号を個別にデジタル化したデジタルコンポーネント映像信号があります。

デジタルコンポーネント映像信号では、映像の水平・垂直の区切りを示す信号と、ビットごとの読み出しタイミングを合わせる信号が併存しています。水平の区切りはSAV・EAVという特殊なデータで表され、ビット読み出しタイミングはTRS信号（Timing Reference Signal）によって実現されます。

デジタル映像信号では、機器ごとにクロックを再生成するリクロック機能があるため、アナログ映像よりも同期の引き込み範囲に多少の余裕があります。しかし、安定した周期で伝送しないと、ジッタなどの原因でノイズが発生し、映像が乱れることに変わりありません。そのため、放送局ではアナログ映像と同様に厳格な同期管理を行っています。

各機器での同期信号の利用

ビデオテープレコーダー：録画・再生時に発生する信号の乱れを補正するために、TBC（Time Base Corrector）という時間軸補正回路が使われています。
放送用・業務用カメラ：外部の同期信号に合わせて映像信号を送り出すためのゲンロック機能が搭載されています。
* フレームシンクロナイザー：外部からの映像信号など、局内の同期信号に合わせることが困難な場合に用いられます。


同期信号は、デジタル通信や映像技術において、信号の正確な伝送を支える重要な基盤となっています。安定した映像やデータ伝送のためには、同期信号の管理と適切な利用が不可欠です。

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