名古屋市交通局名港工場

名港工場（めいこうこうじょう）

名港工場は、愛知県名古屋市港区熱田前新田字中川東に位置する、名古屋市交通局が管理する主要な車両工場および車両基地です。名古屋市営地下鉄ネットワークにおいて、主に名港線と名城線で使用される2000形車両の運用を支える重要な拠点となっています。

立地とアクセス

工場の敷地は、中川運河とJR貨物名古屋港線の名古屋港駅に挟まれた場所にあります。周囲を水辺と鉄道施設に囲まれた、特徴的な立地です。工場へは、地下鉄名港線の名古屋港駅から一本の引き込み線が直接続いています。しかし、地理的な最寄り駅は名古屋港駅ではなく、名港線の築地口駅が該当します。築地口駅からは、少し北西に進んだ場所に位置しています。

担う機能

名港工場では、所属する地下鉄車両に対して多岐にわたるメンテナンス業務を実施しています。車両の安全かつ安定した運行を維持するため、日常的な簡単な点検から、複雑な分解・検査、さらには車両の性能維持や向上を目的とした修理や改造工事まで、高度な技術を要する作業が行われています。具体的には、日々実施される「日常検査」、数週間ごとに行われる「月検査」、約3ヶ月ごとに行われる「列車検査」、そして数年ごとに車両を主要部分まで分解して行う「重要部検査」や、さらに大規模な「全般検査」といった法定検査が、ここ名港工場で徹底的に実施されています。これらの検査と修理・改造を通じて、車両の寿命を延ばし、常に最良の状態に保つ役割を果たしています。

沿革

名港工場の歴史は、名古屋市営地下鉄が金山駅から名古屋港駅まで延伸開業した1971年（昭和46年）3月29日に遡ります。この開業に合わせて新設されたのは、「名港車庫」と呼ばれる施設でした。この車庫の建設用地は、中川運河沿いの国有地を国鉄から買収して確保されたものです。開設当初、名港車庫の主な機能は車両の留置であり、車両の点検としては1か月以内に行われる簡易な検査のみが実施されていました。

その後、名城線の環状化を見据えた車両基地網の再編が進められます。1999年（平成11年）には、名城線東部に大幸車庫が新設され、名城線の車両留置能力に余裕が生まれました。この留置スペースの確保を受け、名港車庫の敷地内に本格的な車両工場を建設する計画が進められます。そして、2004年（平成16年）10月1日、それまでの名港車庫は新たな機能を加え、「名港工場」として再出発しました。この工場化に伴い、それまで名城線の車両工場としての機能を担っていた名城工場は廃止され、その役割は名港工場に引き継がれています。

補足事項

通常、名港工場の敷地内に名古屋市営バスの車両が立ち入ることはありません。しかし、例外的な事例として、2019年（令和元年）に開催された名古屋港みなと祭の際、近隣の名古屋市営バス港明営業所に属する港区役所回転場が手狭になったため、臨時のバス待機場所として一時的に名港工場の敷地が使用されたことがあります。これは、工場としては非常に珍しい出来事でした。

名古屋市交通局には、名港工場の他にも車両工場が存在します。東山線の車両保守を担う藤が丘工場や、鶴舞線・桜通線の車両を担当する日進工場などがあり、それぞれが担当路線の車両保守を専門的に行い、名古屋の地下鉄運行を支えています。

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