名古屋市交通局1600形電車

名古屋市交通局1600形電車

名古屋市交通局1600形電車は、名古屋市の路面電車として1950年代に活躍した車両です。この電車は、旧型のボギー車や劣化した車両を置き換えるために設計・製造され、特にワンマンカーとしての運用が注目されました。

概要

1600形電車は、1950年12月に初めての15両が投入され、その後1951年9月までに合計76両が製造されました。製造を担当したのは、日本車輌製造、新潟鐵工所、日立製作所、愛知富士産業の4社です。全体的なデザインは1500形と類似しながらも、主な特徴は中央扉を排除し、片側に2つの扉を持つことです。また、新型の窓配置は1D8D1となっており、2枚の引き戸を採用しています。前面は3枚窓構造で、中央には方向幕、右側には通風口が設置されています。動力は50PSのモーターを2基搭載し、足回りにはKS40Jまたはブリル76E2と類似した台車が使用されています。基本的な性能は1400形や1500形と同じですが、ワンマン化改造を経た後は、他の車両とは異なる扉配置から乗務員に不評だったとされています。

運用

1600形電車は、新造後しばらくの間、沢上、高辻、港、下之一色の各車庫に配置され、主に名古屋市南部を中心に運行されました。実際には市内のさまざまなルートをカバーしていました。1954年2月からは、下之一色車庫に配置された車両が日本初の路面電車によるワンマン運行を開始しました。この運行は1965年には全系統に広がりを見せましたが、1600形の扉配置はワンマン運行に最適ではなかったため、すべての車両が改造されることはありませんでした。さらに改造された車両も、後部扉の位置関係から運転手には不評であり、1971年からはツーマン車が廃車され始め、1972年3月にはすべての1600形が廃車される結果となりました。

改造

1600形電車にはいくつかの改造が行われました。まず、下之一色線での単線運転に必要な設備が設置された車両があり、正面左窓の上には「後続車確認標識灯」が取り付けられました。また、1954年には下之一色線のワンマン運行開始に伴い、17両がワンマン化改造されました。この際、高機能なオルガンタイプの操作卓が設置され、外観には赤帯が巻かれましたが、正面にはワンマン表示器は取り付けられていませんでした。

その後、1969年には15両が標準的なワンマン改造を受け、小型操作卓が設置されるとともに、ワンマン表示器や車番の小型化も実施されました。しかし、初期と後期ともに扉の移設は行われておらず、扉配置は製造以来一貫して変わらないものでした。

保存車・譲渡車

1600形電車は他の都市や鉄道に譲渡されることはなく、一部の車両が保存されています。特に1603号は、刈谷市交通児童遊園でワンマン車の姿で保存されており、一方1638号は春日井市交通児童遊園にて保存されていましたが、老朽化により2009年に解体されてしまいました。

車両諸元

• - 車長：11586mm
• - 車高：3334mm
• - 車幅：2360mm
• - 定員：70名
• - 自重：14.0t
• - 台車：ブリル76E2類似コピー品、KS40Jなど
• - 電動機：50PS（36.8kW）×2
• - 製造元：日本車輌製造、新潟鉄工所、愛知富士産業、日立製作所

このように、名古屋市交通局1600形電車は、かつて名古屋の街を走った重要な路面電車の一つとして、多くの人々に記憶されています。

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