名古屋市交通局1800形電車

名古屋市交通局1800形電車

名古屋市交通局1800形電車は、過去に名古屋市交通局が運行していた路面電車の一つで、戦後の名古屋市電を象徴する「和製PCCカー」として登場しました。この形式は名古屋市電初の無音電車や間接制御車であり、当時の技術革新を反映しています。

背景

1945年の第二次世界大戦後、名古屋市電は戦災の影響を受けつつもその復興を進めていました。戦後の混乱期を乗り越えるため、徐々に新型車両の導入を進め、1950年代にはアメリカのPCCカーの情報を取り入れた車両の研究が盛んになりました。この中で1800形が誕生することになります。

車両の概要

1800形は1953年から1954年にかけて製造され、総数25両が導入されました。車両はA車とB車の2タイプに分かれ、A車（1801-1814）は1400形をモデルにした新しいデザインが特徴です。B車（1821-1830）は、A車の使用実績を生かして改良が施され、強化された出力のモーターを搭載しました。両者ともに特有の吊掛駆動方式で設計され、ブレーキや車体構造に工夫が凝らされています。

A車（1801-1814）

A車は、戦前の名古屋市電の代表である1400形をもとにしつつも、大幅なモデルチェンジを受けました。車体構造の改良によって、窓配置や扉のデザインも新たにされ、より現代的な車両へと生まれ変わりました。特に、サッシュレスの上段窓が設けられるなど、技術的な進化が顕著に現れています。さらに、吊掛駆動ながらも静音性を持ち合わせることから「無音電車」としての宣伝が行われました。

B車（1821-1830）

B車は初期のA車の運用から得られたデータをもとに、路線のニーズに応じて設計された車両です。前面デザインに若干の変更が加えられ、強化版のモーターを搭載し、さらに強力なブレーキシステムを備えています。このため、PCCカーと同様の性能を持ちながら、より効率的な運行が可能となりました。

運用の実績

1800形は名古屋市の中心部で活躍し、栄町線や東山公園線を中心に運行されました。デビュー当初こそ、初期故障に悩まされ稼働率は低迷しましたが、経験を積むことで保守技術が向上し、その後の新車両の成功につながります。特に運動会などの特別なイベントでは、普段とは異なるルートで運行するなど、子供たちへの思い出を提供しました。

最後の運命

名古屋市電廃止に伴い、1800形も少しずつ姿を消していきました。1970年に最初の廃車が発生し、その後も続々と廃車されていきましたが、1814号は豊田市交通公園に保存されるなど、その名は語り継がれています。名古屋市交通局1800形は、名古屋市電の歴史において重要な役割を果たした車両として記憶され続けるでしょう。

車両のスペック

• - 車長: 12706mm
• - 車高: 3616mm（1801-1814）、3687mm（1821-1830）
• - 車幅: 2404.6mm
• - 定員: 70名（1801-1814）、80名（1821-1830）
• - 自重: 14.0t（1801-1814）、16.0t（1821-1830）
• - 台車: FS60型（1801-1814）、FS61型（1821-1830）
• - 電動機: 38kW×2（1801-1814）、44.8kW×2（1821-1830）

参考文献

• - 日本路面電車同好会名古屋支部編著『名古屋の市電と街並み』トンボ出版、1997年
• - 徳田耕一著『名古屋市電が走った街 今昔』JTB、1999年

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