名古屋市交通局2600形電車

名古屋市交通局2600形電車の歴史と特長

名古屋市交通局2600形電車は、名古屋市交通局がかつて運行していた路面電車の一種であり、1941年に製造された連接車両として知られています。この車両は、日本の路面電車としては早期に連接構造を取り入れた事例の一つとなっています。また、この2600形は、名古屋市内の多くの工場へ通勤するための輸送力を増強する目的で開発されました。

製造の背景

名古屋市電では、沿線に多数の紡績工場や軍需工場があり、通勤需要が急増していました。このため、増加する乗客を効率的に運ぶための新しい車両の必要性が高まりました。ところが、当時は鉄道省の介入や資材の入手困難があったため、できるだけ少ない部品で高い効率を実現することが求められました。このニーズに応える形で、2600形は連接構造を採用して製造されました。

車両の概要

2600形は、1941年に木南車輌製造によって15両（2601から2615）製造され、名義上はLSC形338から352の改造車となっています。車体は特異なデザインで、半流線型の前面を持つ「木南スタイル」と呼ばれる形状が特徴です。整った左右対称の外観を有し、中央の窓の上には行先板が取り付けられ、その上にヘッドライトが埋め込まれています。

この車両の車内はユニークな設計が施されており、中間台車には高床車用のモーターが搭載されています。これにより、床の高さが前後で異なり、急なスロープが存在するため、乗客の移動が若干不便でした。また、当初は小型ボギー車からの電装品を利用する予定でしたが、出力不足が懸念され、結局50Hpのモーターが2基搭載される形となりました。

運用の実際

2600形は栄町線などの幹線に投入され、増大する輸送需要に応えるための重要な役割を果たしました。戦争末期には名古屋市が空襲の標的となり、2600形も被害を受けましたが、その後の改修を経て、戦後も運行が続けられました。特に池下車庫に所属し、栄町線を中心に活躍しました。また、東山線の開業により、これまでの需要が変化し、2600形も利用者の減少に伴って次第に運行頻度が減少しました。

1958年以降、2600形は多くの改造を受け、運行形態も変化しました。特に、集電装置の変更やヘッドライトの位置変更が行われ、その外見に変化を与えました。しかし、それにより独特のデザインが際立つこととなり、名古屋市電の中でもひときわ目を引く存在となりました。

廃車とその後

1960年代には、市電の利用者が減少し、2600形の運行は朝夕のラッシュ時や団体輸送に限定されました。最終的には、路線の縮小に伴い、1968年に半数の車両が廃車され、1969年には残存する全車両が運行を終えました。

車両の仕様

2600形の仕様は以下の通りです。

• - 車体長：18,000mm
• - 車幅：2,334mm
• - 車高：3,575mm
• - 定員：120人
• - 自重：20.0t
• - 製造両数：15両
• - 台車：木南バー型
• - 電動機：37kw×2

このように、名古屋市交通局2600形電車は、輸送力の増強を目指した設計と独特のデザインで、名古屋市の交通史に刻まれた重要な車両でした。

もう一度検索