名古屋議定書

名古屋議定書について

名古屋議定書、正式には「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書」は、2010年に日本の愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議（COP10）において採択された国際的な文書です。この議定書は、遺伝資源の利用に関連する利益の公平な配分を促進し、国際的なルールの下で生物多様性を保護することを目的としています。

概要と目的

名古屋議定書は、遺伝資源、つまり有用な遺伝子を持つ動植物や微生物から得られる利益を、資源を提供した原産国とその利用国が分かち合うための明確な手続きを設けています。この利益配分には、金銭的利益はもちろん、共同研究への参加や技術移転といった非金銭的な利益も含まれます。これにより、遺伝資源を提供する国の権利が守られることを目指しています。

議定書の中で特に注目されるのは、国内法の域外適用に関する条文です。これは、遺伝資源を利用する研究者や企業が、その資源を取得した国の法令を遵守することを義務づけており、その国から輸出する際にも遵守が求められています。これは、国際的に合意したルールが、国内の法律の影響を受けずに適用されることを意図しています。

背景と経緯

名古屋議定書が求められた背景には、生物多様性の保護及びそれに伴う資金の確保があります。従来は動植物という具体的な生物に対する取り決めが多かったものの、遺伝資源に特化したルールは存在しませんでした。COP8での議論を経て、遺伝資源を巡る国際的な枠組みが求められるようになりましたが、特に利益配分に関する様々な論点で、開発途上国と先進国の間には激しい対立が見られました。.

その結果、COP10では複数の問題を抱えながらも、最終日に議長案を元に名古屋議定書が採択されることとなり、大きな成果をあげました。

具体的な内容

議定書の内容には、遺伝資源とその利用に関連する伝統的知識の利益配分も含まれます。利益配分は、当事者間の合意に基づいて行われ、利益のタイプは金銭的なものだけでなく、研究成果の共有などの非金銭的なものも対象となります。また、遺伝資源を利用する際には、その提供国からの事前の同意が必要であり、これは国際的な法の作成に向けた重要な一歩とされています。

遺伝資源の不正利用を防ぐために、各国は必要な法的手続きを整え、企業や研究機関が適正に利用しているかどうかの確認を行う責任があります。

世界的な動向

世界中の多くの国が名古屋議定書に向けた国内法制度の整備を進めています。特にEUでは、名古屋議定書の遵守に向けた規則案が提出され、他の加盟国でも同様の動きが見られます。日本は2017年に名古屋議定書を批准した99番目の国となり、2017年8月には効力を発生させて国内措置の整備に取り組んでいます。

結論

名古屋議定書は、遺伝資源の利用における利益配分の国際的なルールを確立するものであり、各国が協力しあって生物多様性の保全に貢献するための重要な枠組みとなっています。この取り決めにより、生物多様性の保護が進むことが期待されています。

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