名水百選

名水百選：日本の美しい水資源とその保全活動

1985年、環境省の前身である環境庁は、全国各地に点在する貴重な水資源を顕彰するため、「名水百選」を選定しました。これは、歴史的背景や文化的価値、そして何よりも保全状況の良好さといった基準を満たす100の湧水、河川、地下水などを厳選したものです。選定にあたっては、学識経験者らによる調査検討会が、規模、歴史的背景、希少性といった多角的な視点から評価を行い、候補地784ヶ所の中から選定されました。湖沼は選定対象外とされました。

選定の際には、「保全状況が良好であること」と「地域住民による保全活動が行われていること」が必須条件とされ、地域社会による水資源の保護への意識の高さが伺えます。選定された名水は、単なる美しい水景観にとどまらず、地域文化や歴史と深く結び付いた貴重な存在であることがわかります。

昭和の名水百選と平成の名水百選

2008年には、「平成の名水百選」が新たに選定され、昭和の名水百選と合わせて200ヶ所の美しい水資源が日本の宝として認められました。両者には重複はなく、それぞれの時代に選定された名水が、日本の各地に豊かな自然環境が残されていることを示しています。

重要な点として、名水百選は「飲用に適する」ことを条件として選定されたわけではありません。飲用を希望する際は、各地域の自治体から提供される情報を確認するよう、環境省は注意喚起を行っています。これは、水質の変動や安全面への配慮から、利用者の安全確保を最優先する姿勢を示しています。

名水百選選抜総選挙

名水百選選定30周年を記念して、2016年には「名水百選選抜総選挙」が開催されました。これは、昭和と平成の名水百選を対象に、インターネット投票によって人気投票を実施したものです。「観光地」「景観」「秘境地」「おいしさ」の4部門が設けられ、全国民が参加できるイベントとなりました。特に「おいしさ」部門は、名水百選の水を原料とした飲料水製品を対象としており、水の品質やブランド力といった側面も評価の対象となりました。

名水サミット

名水百選に選ばれた地域自治体は、水環境保全の重要性を認識し、1985年に「全国水環境保全市町村連絡協議会」を設立しました。この協議会は、毎年「名水サミット」を開催し、水環境保全に関する議論や情報交換を行っています。近年では、サミット全体を「名水サミット」と呼び、全国大会とシンポジウムを組み合わせる形式で開催されています。初期は「名水サミット」という名称ではなく、近年になって現在の名称に統一されました。サミットでは、水環境保全に関する最新の知見や技術、そして地域における取り組みなどが共有され、持続可能な水資源管理への貢献を目指しています。

名水百選の意義

名水百選は、単なる水資源のリストではありません。日本の豊かな自然環境と、それを守り育んできた人々の努力の結晶です。選定された名水は、地域の活性化や観光資源としての活用にもつながり、多様な形で社会に貢献しています。名水百選を理解することは、日本の自然環境への理解を深め、将来世代に豊かな水環境を継承していくために不可欠です。これからも、名水百選の保全活動は、地域住民や関係機関の連携によって継続・発展していくことでしょう。

もう一度検索