名護市における米軍のヘリポート基地建設の是非を問う市民投票

名護市における米軍ヘリポート基地建設の是非を問う市民投票

この項目は、1997年（平成9年）12月21日に沖縄県名護市で実施された、ある住民投票に関するものである。正式名称は「名護市における米軍のヘリポート基地建設の是非を問う市民投票」と称される。これは、アメリカ軍普天間飛行場の返還が決定されたことを受け、その代替機能として名護市沖合に計画された海上ヘリポート基地の建設について、市民の意思を直接問うために行われた。

実施の経緯

普天間飛行場の返還合意後、代替施設の建設場所を巡る議論の中で、名護市辺野古崎沖合への海上ヘリポート建設案が浮上した。この計画に対し、環境への影響や基地負担の継続に対する懸念から、地元市民の間で強い反対運動が起こった。

市民は自らの意思を表明する手段として、住民投票の実施を求めた。条例制定に向けた直接請求運動が行われ、1997年9月16日には、当時の有権者総数の半数に迫る17,539名もの署名が集められた。この署名を添えて、名護市に対し住民投票条例の制定が請求された。

市民の強い要望を受けた名護市議会は、10月2日に住民投票条例案を可決した。これにより、投票実施に向けた法的な基盤が整えられ、10月6日には正式に「名護市における米軍のヘリポート基地建設の是非を問う市民投票に関する条例」として公布された。

投票の実施と選択肢

条例に基づき、住民投票は1997年12月21日に実施された。投票に際しては、単なる賛否だけでなく、市民の多様な意見をより正確に反映させるため、以下の四つの選択肢が設けられた。

1. 賛成
2. 環境対策や経済効果が期待できるので賛成
3. 反対
4. 環境対策や経済効果が期待できないので反対

これは、基地建設の是非に加えて、計画の持つ環境面や経済面への評価も同時に問う形式であった。

投票結果

この住民投票には、名護市民の大きな関心が寄せられた。当時の有権者数は38,177人であったが、そのうち31,477人が投票所に足を運び、82.45%という非常に高い投票率を記録した。各選択肢の得票数は以下の通りである。

「賛成」：2,562票
「環境対策や経済効果が期待できるので賛成」：11,705票
「反対」：16,254票
「環境対策や経済効果が期待できないので反対」：385票

無効票は565票であった。

これらの結果を建設の「賛成」と「反対」で単純合算すると、以下のようになる。

建設容認派（「賛成」＋「環境対策や経済効果が期待できるので賛成」）：14,267票 (約46%)
建設反対派（「反対」＋「環境対策や経済効果が期待できないので反対」）：16,639票 (約54%)

この集計結果から、海上ヘリポート基地建設に対して反対の立場をとる市民が全体の過半数を占めていることが明確に示された。これは、市民が自らの故郷に新たな基地機能が移設されることに対し、明確な反対の意思を表明した出来事として、その後の基地問題を巡る議論に大きな影響を与えることとなった。

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