向坂松彦

向坂 松彦：NHKの名実況アナウンサー

向坂松彦（さきさか まつひこ）は、1933年12月5日に生まれ、2000年11月8日に逝去した日本の元NHKアナウンサーです。彼はその卓越した実況能力と深い知識で知られ、特に大相撲やオリンピックの競技中継において多くのファンに愛されました。

学歴とキャリアの始まり

早稲田大学第一政治経済学部を卒業後、1956年にNHKに入局。入局同期には、山川静夫や松川洋右がいます。彼は1962年春場所から大相撲の実況を担当し、その後は競馬など他のスポーツ中継にも幅を広げました。彼の実況スタイルは、情熱的で、聴衆を引き込む魅力がありました。

オリンピック実況と名場面

向坂は1964年の東京オリンピック、1972年の冬季札幌オリンピック、そして1976年のモントリオールオリンピックと、重要な国際大会で多くの実況を勤めました。特にモントリオールオリンピックでは、体操のルーマニア選手ナディア・コマネチを「白い妖精」と表現したことで、彼女の印象を強く残しました。これにより、「白い妖精」はコマネチの象徴的なキャッチフレーズとなりました。

大相撲への情熱

大相撲に関しては、彼の実況は特に印象深い記録を残しています。1981年初場所での千代の富士の初優勝、1985年初場所での北の湖の現役最後の一番、1989年名古屋場所での千代の富士と北勝海の横綱同士の戦い、1990年春場所での千代の富士の1000勝達成など、多くの名勝負が向坂によって語られました。特に千代の富士との関わりは深く、彼は十両時代からその能力を見込んで、「いつの日か土俵の天下を取るもの」と確信していました。

執筆活動とメディア出演

松彦は、音声だけでなく、著述家としても活躍しました。彼の著作には、相撲に関する書籍が多く含まれ、特に『私はかく戦った 横綱千代の富士』は千代の富士との共著として注目されました。また、関西テレビの『千代の富士物語』では監修とナレーションを担当しました。彼はNHKを退職後、相撲ジャーナリストとしても活動し、フジテレビの『めざましテレビ』などでコメンテーターとしても名前を馳せました。

最後の日々と影響

向坂は晩年、持病の心臓病に悩まされていました。2000年11月8日、横浜市の自宅にて自ら命を絶つという悲しい最期を迎えました。享年67。彼の遺した業績は今なお多くの人々に影響を与え続けています。エンターテインメントの中で相撲を愛し、自らの言葉でその魅力を伝えた向坂松彦の存在は、決して忘れられることがないでしょう。

向坂 松彦の家族と後継者

向坂松彦の甥に当たる向坂樹興はフジテレビのアナウンサーとして活動しており、NHK退職後は「日本大相撲トーナメント」で共演する機会もありました。彼の家族や後継者たちは、向坂松彦の精神を引き継いで、相撲やスポーツの魅力を広める活動を続けています。

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