吸血蛾

吸血蛾

『吸血蛾』は、横溝正史による名作推理小説であり、金田一耕助シリーズの一部として1955年に発表されました。この作品は、ファッションデザイナーを中心に展開されるミステリーで、独特な魅力を放っています。

あらすじ

物語は、ファッションデザイナー浅茅文代が率いる「虹の会」というモデル団体から始まります。文代の事務所に突然現れる不気味な男が託した小包の中身は、齧られたリンゴでした。そこで始まるのは、文代の周囲で続発する不可解な事件の数々です。

10月15日、新東京日報社が主催するファッションショー中に文代が捻挫し、代役に加代子が立つことになりました。しかし、その夜、加代子が誘拐され、その死体が翌晩、マヌカンを届けるための箱に入れられて運ばれます。同時に文代は、10万円で何かを購入した後にオオカミ男に遭遇し、奇怪な出来事が続いていきます。

事件の深刻さが増す中、虹の会に属するモデルたちが次々と命を奪われていく中、金田一耕助は捜査に乗り出します。彼は友人の記者・川瀬と共に、複数のモデルの死体の発見や、蛾にまつわる謎を追います。

謎が深まる展開

数日後、モデルの一人が見つかるが、その死体は異様な形で展示され、さらに驚くべき事件が続発します。金田一は事件の核心に近づくにつれ、文代の以前の恋人・伊吹との複雑な関係が絡んでいることに気付きます。文代は伊吹をかつてパリで同棲していた恋人として、彼がオオカミ男であると告白します。

やがて、江藤という昆虫学者も登場し、文代のパトロンの長岡が殺害される事件や、行方不明のモデルたちの運命が明らかになりつつあります。金田一たちは、彼らの命を救うために奔走するのです。

結局、金田一は模型のように死体が配置された「血の群像」を発見し、背後に潜む真実に迫ります。文代のアトリエでは、彼女が復讐心に駆られていることが示され、ついに事件の全貌が明らかになります。

登場人物の描写

作品には、私立探偵金田一耕助や警視庁の等々力大志といったキャラクターたちが絡むことで物語に深みが増し、複雑な人間関係が浮かび上がります。特に文代を支えるモデルたちの個性や、彼女を取り巻く人間模様は、物語にスリリングな要素を加えています。

映像化もされた名作

『吸血蛾』は、1956年に映画化され、さらに1977年にはテレビドラマとしても放送されました。影響力のある作品として、推理小説ファンから高い評価を受け続けています。

このように『吸血蛾』は、推理小説としての魅力だけでなく、社会背景や人間の心の闇を描くことで、読者に深い印象を与えています。横溝正史の巧みな筆致により、物語は今なお多くの人々に親しまれ、語り継がれています。

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