周縉

周縉（しゅう しん）は、明代に生きた官僚であり、その字を伯紳（はくしん）と称しました。彼の出身は鄂州武昌県（現在の湖北省武漢市付近）であり、正確な生没年は記録されていません。

周縉は貢生として国子監に入学し、学問に励みました。その後、永清典史（えいせいてんし）という地方官に任じられ、県令の事務を代行する役目を担いました。この時期、彼は地方行政の実際を学び、その手腕を発揮しました。しかし、彼の人生を大きく変える出来事が起こります。

明の第3代皇帝である建文帝の時代、燕王朱棣（後の永楽帝）が反乱を起こし、兵を挙げました。近隣の守令たちが次々と燕王軍に降伏する中、周縉が職務を務める永清県は燕王府に近いという地理的な不利な状況にありました。周囲が燕王に靡く中、周縉はただ一人、建文帝への忠誠を貫き、県城の防備を固めました。

しかし、周縉の奮闘も虚しく、抵抗は長くは続きませんでした。燕王軍の圧倒的な勢力の前に、永清県は陥落寸前となります。彼は県令の印を懐に抱き、南へと逃走しました。逃避行の途中、母の訃報を聞き、一旦帰郷して喪に服することとなります。

その後、燕王軍はついに南京に迫り、建文帝の政権は危機的状況に陥ります。周縉は、事態を憂慮し義軍を糾合し、再び戦う準備を始めましたが、南京が陥落したという知らせを受け、彼は再び逃走し身を隠しました。

やがて周縉は捕らえられ、首枷をつけられた状態で連行され、興州（現在の陝西省漢中市付近）に兵卒として流刑に処せられます。数年後、周縉の子が父の代わりに興州での兵役につくことになり、周縉はやっとのことで故郷に帰ることができました。

度重なる苦難を乗り越えて、周縉は80歳でその生涯を閉じました。彼の生涯は、動乱の時代に翻弄されながらも、自身の信念を貫き通した人物の姿を示しています。彼の行動は、単なる反抗ではなく、忠誠心と勇気の表れとして後世に語り継がれています。

周縉の詳しい事績は、『明史』巻143 列伝第31に記されています。

この歴史的な記録は、周縉が激動の時代にどのように生きたかを物語っており、彼の生涯は不屈の精神と忠義の象徴として後世に伝えられています。

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