唐楼

香港の唐楼

香港における唐楼（とうろう）は、19世紀から1960年代にかけて、中国風と西洋風が融合した建築スタイルで、多くの地域に特有の形を持っています。特に、シンガポールやマカオなど他の地域でも類似のスタイルが見られますが、香港独自の特徴を持つ唐楼は、その独特の文化的背景を反映しています。ここでは、香港において発展した唐楼の歴史と特徴、そしてその保存状況について詳述します。

歴史

戦前の発展

香港の唐楼は、1940年代初頭までの間に急速に発展しました。早くも19世紀中葉には香港に存在し、当初は2〜3階建てで、青レンガや木材を使用し、各階を結ぶ木製の階段を備えていました。また、一部の唐楼には幅2フィートの鉄製の騎楼が付いているものもあり、街の景観を形成していました。

19世紀末から20世紀初頭にかけて、香港の唐楼は一般に3〜4階建てとなり、各階の高さと幅が増し、デザインも洗練されていきました。特に、騎楼が歩道に張り出すようなスタイルが主流となり、以降このスタイルは「広州式騎楼」と呼ばれるようになりました。1930年代には、コンクリートが主要な建材に取って代わり、特に九龍地区に残る唐楼はこの時期の影響を色濃く受けています。

戦後の変化

第二次世界大戦後、香港では急速な人口増加が起こり、住宅不足が深刻化しました。これにより、多くの唐楼は部屋を間仕切りして賃貸する形態（板間房）に変わり、「包租公」や「包租婆」と呼ばれる代表者が賃貸料を取りまとめるシステムを導入しました。このような形で、唐楼は多くの人々の居住空間となっていきました。また、香港の法律では、複数の借家人が利用することを意図された居室として定義されています。

名称と定義

唐楼という名称は香港特有のものであり、その定義は所有者や居住者の国籍に関係なく、建築様式に依存しません。香港大学の建築学部の朱慰先博士は、「唐楼」という言葉は1880年代になってから使われるようになったとしています。

洋楼との違い

唐楼と洋楼の違いは、借地条件と使用目的にあります。洋楼は独立した居住者のみが利用でき、商業目的には使用できませんが、唐楼は賃貸用に小区画に分けられ、商業と居住の両方の目的で使用が可能です。また、唐楼は通常間仕切りが少なく、自由度が高いですが、洋楼は部屋数が多く設計されているのが特長です。

騎楼の特徴

香港の唐楼の重要な特徴には騎楼が挙げられます。騎楼は歩道上に張り出し、柱で支えられている構造で、これにより雨天でも濡れずに通行できるようになっています。騎楼の起源については諸説あり、広州式がルーツであると考えられていますが、その具体的な歴史的背景には未だ解明されていない点も多いです。

唐楼の歴史的分類

香港の唐楼は、植民地時代の建築物条例や技術に応じて、4つの世代に分けることができます。これにはヴィクトリアン様式、エドワーディアン様式、モダニズムなどが含まれ、各時代の特徴が色濃く反映されています。

唐楼の保存と再利用

近年、市区重建局は唐楼の保存や文化的な再利用に取り組んでいます。特に、湾仔地区の「ブルーハウス」は政府によって歴史建築に指定され、文化財としての重要性が認識されています。しかし、急速な都市開発により、古い唐楼が解体されるケースも増加しており、これが歴史的文物の保存と現代の開発とのバランスを問う問題を引き起こしています。

結論

香港の唐楼は、地域の歴史と文化を深く理解するための重要な存在です。その独特の建物としての価値だけでなく、住民の生活様式や社会的構造を反映した貴重な文化資産です。今後もその保存と再利用が進められることが期待されています。

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