商家「駒屋」

商家「駒屋」：二川宿の歴史を語る商家

愛知県豊橋市二川町に位置する「駒屋」は、単なる商家という枠を超えた、歴史と文化を凝縮した貴重な建造物です。旧東海道二川宿に佇むその姿は、往時の宿場町の賑わいを彷彿とさせます。

田村家と駒屋の歩み

駒屋の礎を築いたのは、元禄4年(1691年)に遠江国から二川宿に移り住んだ田村家です。当初は医業を営んでいましたが、後に米穀商や質屋へと事業を拡大していきました。明和7年(1770年)には現在の地である新橋町の枡形北側に移転し、代々「駒屋」の屋号を継承しました。

田村家は、二川宿の運営に深く関わり、宿役人や村役人を歴任。安政2年(1855年)には苗字帯刀を許されるなど、地域社会において重要な役割を担っていました。

家系には、多様な教養を身につけた文化人も輩出しています。9代当主の田村善蔵苗政(1830-1891)は、書道、華道、南画、茶道、俳諧など、幅広い文化活動に携わった人物でした。また、10代当主の田村善蔵(田村邦三郎、1861-1921)は二川郵便局長や渥美郡会議員を歴任するなど、行政面でも活躍しました。さらに、11代当主の[田村憲造]は東京帝国大学教授を務めた薬学者(医学博士)であり、その後の世代にも薬学者を輩出しています。

初代から12代当主までの系図を見ると、医師や行政関係者など、それぞれの時代で地域社会に貢献した人物が名を連ねていることがわかります。

建物の概要と保存

駒屋を構成する建物は、主屋、土蔵、茶室など8棟からなり、それぞれが歴史の重みを感じさせる佇まいです。2000年代に入り、建物の調査が行われ、その歴史的価値が改めて認識されました。2002年には田村家から豊橋市に寄付され、2003年には豊橋市指定有形文化財に指定されました。その後、2012年から2014年にかけて大規模な改修・復原工事が行われ、2015年11月には一般公開されることとなりました。2016年には都市景観大賞（都市景観部門）を受賞するなど、その価値は広く認められています。

現在、駒屋では、歴史的建造物としての保存と活用が両立されています。一般公開により、多くの人がその歴史に触れる機会を得るとともに、地域活性化にも貢献しています。

参考文献

豊橋市二川宿本陣史料館『田村家文書』
豊橋市二川宿本陣史料館『商家駒屋修復工事報告書』、2015年3月

アクセス情報

駒屋へのアクセス方法は、豊橋市二川宿本陣資料館やNPO法人二川宿などのウェブサイトで確認できます。FacebookやInstagramなどのSNSでも情報発信が行われています。

もう一度検索