喝采 (1929年の映画)

映画『喝采』：技術革新と母娘の物語

1929年、ルーベン・マムーリアン監督によって世に送り出されたアメリカ映画『喝采』(原題: Applause)は、トーキー初期の映画製作における技術的な制約を軽々と飛び越えた、画期的な作品として知られています。当時の映画製作は、音声処理やカメラワークに多くの制限がありました。しかし、『喝采』では、それらの制約を大胆に打ち破り、自由なカメラワークと効果的な音声処理によって、これまでにないダイナミックな映像表現を実現しています。

物語：バーレスクのスターと娘の葛藤

物語の中心は、バーレスク劇場でスターとして活躍するキティ・ダーリングとその娘エイプリルです。華やかな舞台の裏側では、アルコール依存症に苦しむキティの惨めな生活が描かれています。かつてはバーレスクで人気を博したキティも、最盛期は過ぎ去り、今は愛人のヒッチというコメディアンと生活を共にしています。ヒッチはキティのお金にしか興味がなく、娘のエイプリルを家に連れ戻そうと画策します。

長年修道院で育てられたエイプリルは、世間知らずながらも純粋な心を持っています。しかし、彼女は母親の堕落した生活に衝撃を受け、失望します。ヒッチはエイプリルの美貌と才能に目をつけ、ショービジネスの世界に引き込もうとします。エイプリルの純粋な心を汚そうとするヒッチの企みに、キティは心を痛めます。

一方、エイプリルは街で若い船乗りトニーと出会い、恋に落ちます。二人は結婚を決意し、幸せな未来を夢見ていました。しかし、エイプリルは母親の惨めな状況を目の当たりにし、結婚を延期します。彼女は母親を助けるため、自らバーレスクの舞台に立つ決意をします。

キティは睡眠薬を過剰摂取し、ショーに出演できなくなります。エイプリルは、母親の代わりに舞台に立つことを決意します。しかし、エイプリルは過酷な現実を受け止めきれず、舞台を逃げ出してしまいます。そこにトニーが現れ、二人は抱き合い、新たな人生を歩み始めることを誓います。映画のラストシーンは、キティのポスターが映し出され、彼女の人生と母娘の絆が深く刻まれた物語が幕を閉じます。

キャストとスタッフ

本作でキティ・ダーリングを演じたのは、映画『ショウボート』で人気を博したヘレン・モーガン。娘エイプリル役にはジョーン・ピアース。その他、フラー・メリッシュ・Jr、ジャック・キャメロン、ヘンリー・ワズワースらが出演しています。監督はルーベン・マムーリアン、原作はベス・ブラウン、脚色はギャラット・フォートと、当時のハリウッドを代表する才能が集結しました。

映画製作におけるエピソード

『喝采』の製作中には、興味深いエピソードが残されています。キティが子守唄を歌い、エイプリルがお祈りするシーンの撮影時、録音技師は、複数の音声を同時に収録することが技術的に不可能だと主張しました。しかし、マムーリアン監督は、複数のマイクとチャンネルを使用して録音し、後から重ね合わせるという斬新な手法を提案し、会社の大ボスであるアドルフ・ズーカーの許可を得て、見事撮影に成功しています。このエピソードからも、マムーリアン監督の革新的な精神と技術に対する高い理解がうかがえます。

まとめ

『喝采』は、技術的にも芸術的にも高い水準を達成した、トーキー初期の重要な作品です。時代を超えて観客を魅了する、母娘の感動的な物語と、革新的な映画技術は、今もなお多くの人の心に響き渡ります。

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