嘔吐恐怖症

嘔吐恐怖症（おうときょうふしょう）

嘔吐恐怖症は、自分や他人が嘔吐することに対して強い恐怖感を抱く状態を指します。この障害はパニック障害の一種として位置づけられており、不安神経症やうつを伴うケースも多く見受けられます。小さな頃の経験が影響し、他人の嘔吐を見たり、自身が吐くことで恥ずかしさや苦痛を感じたことなどが原因となることが一般的です。

原因

多くの場合、嘔吐恐怖症は幼少期における悪い経験が引き金となります。例えば、自分が嘔吐した際に激しい苦痛を感じたことや、他者の嘔吐を見て強い嫌悪感を抱いた経験が影響することが多いです。これらの記憶が蓄積され、嘔吐に対する強い恐怖心が芽生えるのです。

症状

嘔吐恐怖症の症状は非常に深刻で、吐くことへの恐怖が現れた際には、動悸やめまい、震えといった身体反応が引き起こされます。そのため、体調が優れない時でさえ、恐怖心が優先されて我慢してしまう人が多くいます。恐怖心が高まることで、自身の吐き気や他者の嘔吐に敏感になり、外食や人との交流が難しくなることがあります。

主な trigger（引き金）は、自分が吐くことを想像した時、家族や他人が吐いているのを見た時、嘔吐物の匂いや視覚に触れた時などです。また、吐くことに関連する言葉や過去の出来事を思い出すことでも強い不安が引き起こされることがあります。

個人によって恐怖のパターンは異なります。ある人は自分の嘔吐に関しては平気でも、他人の嘔吐に強い恐怖を示すことがあります。また、他人が嘔吐する現場を見せられると強制することもあり、嘔吐することよりも死ぬことへの恐れが勝る場合もあります。

治療法

治療方法にはいくつかのアプローチがあります。特に外出ができない場合には行動療法が効果的だとされており、一駅ずつの電車移動を繰り返すなど、徐々に状況に慣れていくことで症状を軽減することが可能です。嘔吐感を抑えるためには、ドンペリドンと呼ばれる薬剤が使用されることがあります。このような方法の中で、認知行動療法は特に効果があると実証されています。

認知行動療法

認知行動療法を利用した治療法には、いくつかの手法が存在します。それぞれの方法が、患者の恐怖心を和らげる助けとなるものです。

• - 注意のシフトトレーニング：食事中や不安な状況で内面的な感覚に意識を向けるのではなく、外部の刺激に意識を向けることで、恐怖感を軽減するサポートを行います。
• - セルフモニタリング：恐怖を感じる場面での実際の出来事を記録することで、予測と現実を区別できるように支援します。
• - 曝露療法：吐き気に対する不安を感じる状況に敢えて直面することで、恐怖心を克服する援助を行います。この方法によって、予期していた恐怖が現実には起こらないことを実感することができ、症状が改善することが期待されます。

曝露療法には行動実験も併用でき、たとえば「満腹感が嘔吐をもたらす」という信念の妥当性を検証し、実際にはそうでないことを理解する事例も報告されています。また、嘔吐に対する他者の評価を調査することも効果的で、他者からの迷惑と思われることが少ないことを知ることで不安を和らげられるケースも存在します。

嘔吐恐怖症は非常に厄介な状態ですが、適切な治療やサポートで克服することが可能です。恐怖に悩む方は、専門家の手を借りて前向きに取り組むことが重要です。

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