嚢胞

嚢胞：体内にできる袋状の病変

嚢胞とは、体内にできる袋状の構造物で、その内部に液体が貯留している病態です。多くの場合、良性で自覚症状を伴いませんが、大きくなったり、内部の成分が変化したりすることで、圧迫感や痛みなどの症状が現れることもあります。嚢胞の発生部位や種類によって、その性質や治療法は大きく異なります。

嚢胞の種類と特徴

嚢胞は、体内の様々な臓器で発生する可能性があり、それぞれの臓器で特徴的な症状や病態を示します。以下、主要な臓器における嚢胞について説明します。

肝嚢胞

肝臓に発生する嚢胞は、多くの場合良性で、特に治療を必要としません。しかし、大きな嚢胞が他の臓器を圧迫する場合や、嚢胞内に異常な成分が認められる場合は、治療が必要となることがあります。先天性多発性肝嚢胞など、遺伝性の疾患も存在します。

腎嚢胞

腎臓に発生する嚢胞は、加齢とともに発生頻度が増加します。多くの場合良性ですが、大きさが大きくなったり、周囲の臓器を圧迫したり、水腎症を引き起こすような場合には、手術などの治療が必要となる場合があります。多発性嚢胞腎などの遺伝性疾患も存在し、慢性腎不全につながる可能性があります。腎嚢胞は、画像検査に基づいたBosniak分類を用いて、悪性化の可能性が評価されます。

脾嚢胞

脾臓に発生する嚢胞は、通常良性で、特に問題となることは少ないです。しかし、嚢胞の中にしこりがあったり、嚢胞の壁が厚くなっている場合は、精密検査が必要です。

膵嚢胞

膵臓に発生する嚢胞は、膵液の貯留や腫瘍の形成などが原因で生じます。小さな単純な嚢胞は問題ありませんが、5mm以上の嚢胞や複雑な形状の嚢胞は、経過観察や精密検査が必要です。膵嚢胞性腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍があり、慎重な鑑別が必要です。

乳房嚢胞

乳房の単純性嚢胞は、乳腺症の一部として発生することが多く、多くの場合良性です。内部に液体が貯留し、触診で柔らかく感じられます。しかし、混合性パターン（充実部と液状部を有する）の腫瘤は、大きさに応じて悪性化の可能性が評価されます。

甲状腺嚢胞

甲状腺に発生する嚢胞は、濾胞へのコロイドの充満や出血、退行変性などが原因で生じます。多くは良性で、特に治療は必要ありません。しかし、大きさが20mm以上になるなど、症状を伴う場合は穿刺吸引細胞診などの精密検査が必要となる場合があります。

卵巣嚢胞

卵巣に発生する嚢胞には様々な種類があり、良性腫瘍である漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、類内膜嚢胞腺腫、明細胞嚢胞腺腫、漿液粘液性嚢胞腺腫などがあります。他に子宮内膜症性嚢胞、卵胞嚢胞、黄体嚢胞などがあります。多くは良性ですが、大きくなったり、症状を呈したりする場合には、治療が必要となる場合があります。

副鼻腔嚢胞

副鼻腔に発生する嚢胞は、粘膜の炎症や外傷などが原因で生じます。大きくなると、眼球の突出や頬の腫れなどの症状を引き起こす可能性があります。

精巣上体嚢胞

精巣上体嚢胞は、陰嚢内にできる無痛性の嚢胞で、多くの場合良性です。大きくなると痛みを伴う場合があります。

歯科嚢胞

歯周病や歯根の炎症などが原因で発生する嚢胞です。

先天性嚢胞

類皮嚢胞、鰓嚢胞など、生まれつき存在する嚢胞です。

診断と治療

嚢胞の診断には、超音波検査、CT検査、MRI検査などが用いられます。治療法は、嚢胞の種類、大きさ、症状などによって異なります。多くの良性嚢胞は経過観察のみで問題ありませんが、悪性化の可能性があるものや、症状を伴う場合には、手術や薬物療法などの治療が必要となる場合があります。

まとめ

嚢胞は、様々な臓器に発生する可能性のある袋状の病変です。多くの場合良性ですが、種類や大きさ、症状によって適切な診断と治療が必要です。早期発見、早期治療が重要です。

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