囚人貸出制度

囚人貸出制度の歴史

囚人貸出制度（しゅうじんかしだしせいど）は、アメリカ合衆国の南部において、1865年の憲法修正第十三条によって奴隷が解放された後に導入された懲役制度です。この制度は、州が民間企業に囚人を貸し出すことを許可し、その返礼として企業から料金を受け取る仕組みでした。囚人たちは通常、賃金を支払われることなく、日中は刑務所外で働かされ、夜には再び刑務所に戻されていました。

著名な犯罪学者ソーステン・ゼリンは、著書『Slavery and the Penal System』の中で、囚人貸出制度が政府と企業の双方に利益をもたらすことを目的としていたと指摘しています。実際、この制度は南北戦争後のレコンストラクション時代に急速に広がりました。それは、戦争によって解放された奴隷の代わりに労働力を探していた農家や実業家のための解決策であったのです。

1868年5月11日、ジョージア州の暫定知事トーマス・ルーガーによって、ジョージア・アラバマ鉄道のために100名のアフリカ系アメリカ人囚人が貸し出されるという初の試みが実施されました。この成功を契機に、囚人貸出制度は広がっていきました。鉄道、採鉱、農業、伐木の現場では、多くの囚人が無賃で働かされ、彼らは休むことなく酷使されることが多く、劣悪な環境の中で過酷な労働を強いられました。

この制度によって、州政府は刑務所運営のコストの約372%に相当する収入を得ることができました。そのため、州の政治家たちはこの制度を維持しようとし、廃止の声に抵抗しました。結果として、囚人の中には軽視され、虐待を受ける者が多かったのです。

特に、この制度は南北戦争後にアフリカ系アメリカ人の収監者数が劇的に増加する一因ともなりました。テネシー州の例では、1865年10月にナッシュビルの刑務所ではアフリカ系アメリカ人が収監者の33%を占めていたのに対し、1867年には58.3%に達しました。この割合はさらに上昇し、1869年には64%、1877年から1879年には67%に達し、収監者数も激増しました。

この影響は他の州にも及び、ジョージア州では1868年から1908年にかけて収監者数が10倍に増加し、ノースカロライナ州やフロリダ州、ミシシッピ州でも同様の増加が見られました。アラバマ州でも収監者の数は374名から1903年には1,878名、1919年には2,453名に達するなど、収監制度の拡大が続きました。

囚人貸出制度は20世紀前半に段階的に廃止されていき、1928年にはアラバマ州がこの制度を完全に禁止しました。この制度の廃止は、囚人に対する厳しい取り扱いが社会的に問題視されるようになった結果とも考えられています。また、政治的な動きや報復が背景にあるとも言われています。

今日では、囚人貸出制度そのものは存在しなくなりましたが、その影響はプランテーションや産業刑務所、チェーンギャングなど、他の形態の囚人労働に引き継がれています。このように、当時の制度の影響は今でも見え隠れしており、アメリカ社会における囚人の存在や扱いについての議論は続いています。

もう一度検索